金融庁 企業会計審議会が2011年6月より、IFRS(国際会計基準)導入方針の見直しに関する議論を進めていることはご存じの方が多いと思う。自見正三郎金融担当大臣発言をきっかけに再開した審議会では、IFRSの基本的な捉え方にまでさかのぼった論点も交えて、2012年5月時点でも議論を継続している。

 金融庁側は審議会での議論について、11項目の論点(今後の議論・検討の進め方(案))を打ち出している。2012年5月上旬の時点で10項目に関して議論したものの、何らかの結論を出すまでには、まだ時間がかかりそうである。

 様々な議論を経た上で、日本の企業開示制度の中でIFRSが結果的にどのような位置付けになるかについては、まだ不確定の要素が多い。それでも、今後のIFRS対応の準備の進め方を決める上で、「IFRSが日本企業にどのような価値をもたらす可能性があるのか」をこの段階で再確認しておくことは意味があると筆者は考えている。

 実際、審議会の議論の中で、企業が自ら積極的にIFRSを採用することを禁止すべきという論調はほとんどないと見受けられる。

 この連載では、IFRSを以下の四つの視点から再検討した上で、それぞれの企業にとっての価値を検討してみたい。

  1. グローバル資本市場の共通言語的な会計基準
  2. 公正価値会計の色彩が強い会計基準
  3. 原則主義の会計基準
  4. 世界各国で利用できる会計基準

 今回は1と2を取り上げる。次回に3と4について説明する。