愛媛CATVは松山市内でIPTVの実証実験を2012年5月に開始する。一般に市販されているアクトビラ対応テレビや録画機などが搭載するIPチューナー機能を活用することで、セットトップボックス(STB)不要で1チャンネルごとに契約できるサービスの実現を目指す。

 アクトビラ対応機器で利用すると言うとビデオオンデマンド(VOD)サービスのようだが、今回実験で提供するのは放送をライブ配信するチャンネルサービスが主軸となる。周波数の制限がないIPTVでは、配信するチャンネル数に原理上の上限がなく、視聴者層が限られるような専門チャンネルなども、帯域の制限を気にせず提供しやすくなるという。また、既存のアクトビラの仕組みを利用することで低コストでサービス提供でき、利用者にとっても手持ちの機器で手軽に利用できるメリットがあると愛媛CATVは説明する。

 愛媛CATVのホームパス12万4000世帯のうち、STBを設置しているのは3万8000世帯で、再送信世帯が大半を占める。「いくらSTBが安くなっても再送信世帯に利用してもらうのは難しい。一方、既にユーザーが持っているテレビで利用でき、1チャンネル単位で気軽に利用できるサービスが提供できれば、こうした世帯にも有料チャンネルを利用してもらえるのではないか」と新サービス提供の狙いを説明した。

コミュチャンのデータ放送入り口にサービス利用

 アクトビラ対応機器を利用する場合に、リモコンの「アクトビラボタン」のようなポータル画面への簡単な移動手段をどう提供するかという課題があった。今回の実証実験では、愛媛CATVが提供するコミュニティーチャンネルのデータ放送で、リンクを組み込んだボタンを設置し、このボタンを押すとポータル画面に移動する仕組みを組み込むことで、この課題を解決した。

 実験では愛媛CATVのコミュニティーチャンネルのほかに、実験の趣旨に賛同する番組供給事業者の番組や電子新聞、折り込みチラシなどのサービス提供を予定している。現在番供各社に協力を依頼しているところで、数社の協力が得られそうだという。実証実験は2012年4月に参加世帯100世帯を募集し、5月から開始する。その後約1年間実験を行い、2013年以降の商業化を目指す。1年間の実験では「ユーザーの環境整備や使い勝手に関する課題」「同一世帯で複数チャンネルを視聴する場合など、実際の利用環境における技術的課題」「権利処理」──の3点について、重点的に検証する。

 愛媛CATVでは今回の実証実験を進めるに当たり、四国電力やNTT西日本なども参加する「スマートテレビ実験協議会」を設立し、共同で検討作業を進めている。実証実験を通じて立ち上げたサービスプラットフォームを愛媛CATVだけが利用するのではなく、ほかの事業者も利用できるようにすることを想定している。また、サービス利用に必要となるインターネット回線についても「ケーブルインターネットだけでなく、他キャリアの回線に開放することも検討する」と説明した。