富士通が大規模な組織改革に乗り出した。この4月、SEと営業が同じ組織に所属する「(システムの)製販一体」をやめ、それぞれが異なる組織に所属する「製販分離」型体制に変えた()。富士通がSEと営業の組織を分けるのは、8年ぶりとなる。

図●SEと営業を分離した富士通の新体制の概要
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 今回の組織改革の対象は、約5000人のSEと約5000人の営業担当者だ。これまでは「金融」や「社会基盤」といった約40ある本部に、SEと営業が混在していた。新体制では、SEは次の四つのグループのいずれかに所属する。新技術の導入を支援する「フィールド支援」、グローバル展開などを担う「共通技術」、採算管理の「アシュアランス」、そして「産業(産業流通やヘルスケアなど)」だ。営業担当者は、「産業ソリューション」や「流通ソリューション」などの業種グループに所属する。

 富士通は6月をメドに、グループ内の詳細なチーム構成を固める。富士通システムズ・イーストなど主要グループ企業も、段階的に富士通同様の製販分離の組織に切り替えていく計画だ。

 山本正已社長は組織改革の狙いを、「守りから攻めへの転換」と説明する(関連記事)。そのためには、SEと営業が一体となっている体制のデメリットを払拭する必要があった。

 SEと営業が一体の場合、提案段階からSEが参画するため、顧客の要望に正対したシステム構築をしやすい。採算性も高めやすい。だが、SEと営業が馴れ合いの関係になり、失敗を恐れ保守的な案件のみを受注する傾向もあった。「SEが営業の裾を踏んでいるようだった」と、上嶋裕和執行役員常務は評する。

 新体制では、SEと営業の“しがらみ”を組織ごと断ち切る。これにより、ビッグデータやクラウドといった新規案件の獲得を強化する。100億円を超えていた不採算案件が「二桁前半に減った」(同)ことも、採算性向上よりも新規案件獲得に軸足を移す組織改革を後押しした。上嶋常務は、「売上高を年4~5%は伸ばしたい」と意気込みをみせる。

 今回の組織改革は、前例が少ない挑戦的な案件を手がけやすくなるという点で、ユーザー企業にとってもメリットがある。一方、顧客の要望に柔軟に対応するという“製販一体”のメリットが、失われるてしまう可能性もある。富士通の手腕が試される。