ARM版のWindows 8が登場すれば、社内PCからタブレット端末まで一元管理でき、管理コストを下げられるのでは―。こうしたシステム管理者の考えは、期待はずれに終わるかもしれない。

 米マイクロソフトは2012年4月、Windows 8のエディション構成を発表した。まずx86版は、基本構成の「Windows 8」、法人向け機能を加えた上位版「Windows 8 Pro」、ソフトウエアアシュアランス(SA)契約を結んだ企業向け最上位版「Windows 8 Enterprise」の3種類だ。

 一方、タブレット端末が中心になるとされるARM搭載端末向けは「Windows RT」一種類のみで、法人向けの機能は含まない。Active Directoryやグループポリシーといった、これまで法人版で対応していた管理機能は、ARM搭載端末では使えないことになる。仮想化ソフト「Hyper-V」など法人版で搭載される新機能も、ARM版では使えない()。

表●Windows 8の企業向け新機能
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 Windows RTでは、x86版と共通のメトロスタイルアプリが使えるほか、オフィスソフトが標準添付される。Active Directory対応であれば、安価な業務用の端末として使える可能性があった。 マイクロソフトはWindows RTの企業向け用途を見越し、アプリ配布やポリシー設定ができる独自の管理ツールを開発している。「開発中の管理ツールは、MDM(モバイルデバイス管理)に近いものになる」(マイクロソフト サーバー&クラウド部門 コーポレートバイスプレジデントのビル・レイン氏)。ただし、Active Directoryで構築済みの管理システムを流用する場合と比べ、管理の手間やコストは高くつく。今後、ARM版のActive Directory対応が期待されるところだ。

 現時点で、社内PCからタブレット端末まで一元管理を望むのであれば、x86版の法人向けWindows 8を載せたタブレット端末を導入するのが現実的だ。

 特にWindows 8 Enterpriseには、多様なワークスタイルに対応した新機能が並ぶ。例えばEnterprise専用となる「Windows To Go」は、社内のWindows 8環境をUSBストレージにまるごと格納し、持ち出せる機能だ。

 「幅広いワークスタイルに対応したいと考えるなら、Windows RTよりWindows 8 Enterpriseを」。各エディションの機能構成には、マイクロソフトのそんなメッセージが透けて見える。