スマートフォン向けアプリマーケットで大きな存在感を示しているのは、App Store(第2回で解説)とGoogle Play(第3回で解説)の二つだ。だが、特にAndroidプラットフォームに向けては、独自のアプリマーケットを提供する事業者も登場している。これら独自のマーケットは、“王道”ともいうべき2大マーケットに対して、どのような差別化を図っているのだろうか。

初期の独自マーケットは撤退・方針転換が相次ぐ

 App StoreやGoogle Playのサービス開始初期は、課金やレコメンドなどの環境整備が進んでいるとは言えなかった。特に日本においてはフィーチャーフォン向けのコンテンツ市場が既に立ち上がっており、そのためフィーチャーフォン向けとスマートフォン向けアプリマーケットが比較されてしまった。その結果、後者についてはローカル市場に向けてきめ細かな対応がなされていないと評価されることも多く、2010年頃にはAndroid向けに独自のアプリマーケットを展開しようという事業者が多く現れた。

 特に独自マーケットの展開に積極的な動きを見せたのが携帯電話事業者である。多くのユーザーが今後スマートフォンへ移行することを見越し、アプリをフィーチャーフォン向けコンテンツに代わる市場に育てるべく、事前審査をしっかり実施し、日本のユーザーに分かりやすい形でアプリを紹介するなど、安心して利用できるアプリマーケットの整備を目指してきた。NTTドコモの「ドコモマーケット」や、KDDIの「au one Market」などが、その代表例といえるだろう。

写真1●NTTドコモの「dマーケット」に設けられた「アプリ&レビュー」
写真1●NTTドコモの「dマーケット」に設けられた「アプリ&レビュー」
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 他にも時期を同じくして、NECビッグローブの「andronavi」やベクターの「AndroApp」など、複数の独自マーケットが相次いで立ち上がったものの、それらのいくつかは撤退、あるいはマーケットではなく、アプリ紹介サイトとしてGoogle Playへの導線になっている。例えばAndroid版のドコモマーケットは「dマーケット」に衣替えし、アプリ関連はGoogle Play内のアプリを厳選して紹介する「アプリ&レビュー」がサービスの中心となっている(写真1)。

 初期の独自マーケット展開の試みの多くがとん挫した理由はさまざまだが、やはりスマートフォンのアプリを販売するビジネス自体が長きにわたって低迷しており、当初期待されていたアプリ販売時の決済手数料によって収益を得るビジネスモデルが成立しなかったことが、主な要因として挙げられるだろう。