スマートフォン向けサービスのコンテスト「A3 2012」アプリ/Webサービス部門の優秀賞に選ばれたのは、実世界GUIフレームワーク「GoldFish」と、ソーシャルブラウザ「jigbrowser+」の2作品だ。

「実世界のマルチコントローラ」を目指して
<優秀賞>アプリ/Webサービス部門
GoldFish - 実世界GUIフレームワーク
作者:慶應義塾大学環境情報学部増井研究会

 「GoldFish - 実世界GUIフレームワーク」は、スマートフォンをかざしたり、傾けたりすることで、機器やドアを操作したり、データをコピー・ペーストしたりといった、実世界を操作することができる仕組みだ。具体的には、NFCリーダー内蔵のAndroid端末によってNFCタグを読み取り、JavaScriptでその動作を記述する。

 GoldFishは、Android上で動作するGoldFishクライアントとGoldFishサーバーの組み合わせで動作する。動作の流れは以下のようになる。

1.NFCタグのIDとWebページのURLの対応をGoldFishサーバーに登録

2.NFC内蔵のAndroidでNFCタグにタッチすると、タグに対して登録してあるWebページが自動で開く

3.ページ内容がAndroidに表示され、センサー情報を扱うJavaScriptプログラムが動く

 プレゼンテーションで印象深かった言葉が「実生活コピペ」だ。NFCタグを貼ったパソコンにAndroid端末を近づけ、データのコピー&ペーストといったGUI的操作ができる様子をスライドで示してみせた。さらに一歩進み、NFCタグを貼ったドアに向けAndroid端末を操作してドアを開けるという回転GUIの例も。これらの実践結果から「GoldFishは実世界のマルチコントローラ」と説き、実世界GUIの素晴らしさをアピールした。研究成果のページでは、GoldFishによる実世界GUIの実例として、上記の実世界コピペ、回転GUIに加えて「関連情報やマニュアルの表示」「時計表示」を示している。

動画●GoldFishを用いた「実生活コピペ」。Android端末でPCからデータをすくい上げ、別のPCへポイっと移す
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写真●情報表示の実例。NFCタグにAndroid端末を近付けて商品情報を表示する
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写真●時計表示の実例
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写真●回転GUIの実例。ドア脇に貼ったNFCタグにAndroid端末をタッチしてカギを回す
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 「『AndroidとGoldFishで何ができるのか?』という問いは、『パソコンとマウスで何ができるのか?』という問いと同じで、『ほぼ何でもできる』というのが答になる」(研究成果のページより引用)。慶應義塾大学環境情報学部の増井俊之教授はユーザーインターフェース研究の第一人者であり、日本語入力システム「POBox」を開発し、今やスマートフォンになくてはならないフリック入力の開発にも携わった(関連記事)。こうした実績を鑑みると、GoldFishが我々のリアルな生活に根付く可能性は十分にあると見ていいだろう。

作者に聞く

慶應義塾大学環境情報学部増井研究会 橋本翔氏
慶應義塾大学環境情報学部増井研究会氏 濱田夢加氏、増井俊之氏、橋本翔氏

アプリを開発されたきっかけは。

 増井研究会では、以前からボタンやメニュー、ドラッグ&ドロップ等のGUI操作を実世界で行う実世界GUIの研究を行なっていました。AndroidとNFCで実世界GUIアプリケーションを簡単に作れるフレームワークがあれば便利なのでGoldFishを作りました。

苦心された点は。

 JavaScriptとAndroidのブリッジ部分に少し苦労しました。むしろGoldFish本体よりも、GoldFishからサーボモータ、プリンタ、シリアルポート、赤外線学習リモコンなどを操作できるようにするツール群の実装が面倒でした。

ユーザーに向けてのメッセージを。

 使い勝手が不便だと思ったらhackしましょう。GoldFishを使えばそれなりに簡単に作れると思います。