ここ何回かに渡って、特に海外の“ソーシャルメディア担当者”について、その考え方と実践の形について述べてきた。こういった、特に海外の話に対して「ウチはまだまだ…」という状況の人も少なくないだろう。そもそも「ソーシャルメディアマーケティング」や「デジタルマーケティング」という言葉そのものが、ある意味まだホットなものと考えられているところもあるはずだ。

 つまり、まだまだ「これから」という実情なのだが、この「これから」を今回のテーマとしたい。これまでも本連載で「これから」実際にビジネスにおいてソーシャルメディアを活用していく人に向けて様々なことを書いてきたが、今回は新たに違った角度でアプローチしてみよう。

正論で真っ正面から突破するのは難しいことも

 これまで本連載で書いてきたことは、いわば正論といえるものである。こうした正論は「言われていることはよくわかるが、実際には…」となることが少なくない。実際、これまで述べてきたことは、言葉やフレーズは変われど、国内外を問わずあちこちで語られている。だが、きちんと実践できているケースは、それほど多くないだろう。

 ソーシャルメディアを自分たちのビジネスに活用しようということを考え、様々なプランを立ててはいるものの、最終的に実践に至らず止まってしまうということもあるはずだ。その原因はいろいろ考えられるが、社内の他部門やマネジメント層の理解をうまく得られていないケースも少なくない。

 では、なぜ理解を得られないのだろう。これが今回のテーマとなる。

 これは、語弊を恐れずに身も蓋もなく言えば、一言で説明がついてしまう。それは「他部門やマネジメント層がソーシャルメディアについて理解してくれない」のではなく「他部門やマネジメント層に対して、自分たちが“ソーシャルメディアのあるビジネス”を、きちんとわかりやすい文脈で伝えきれていない」ということだ。

自分たちのビジネスと結びつけて説明することが重要

 この前提を踏まえていないため、まず「ソーシャルメディアとは何か」を説明しようとするし、その結果「Facebookのユーザー数は世界で9億人」というところからスタートしてしまうことになる。ソーシャルメディアを活用するということ自体を目的としているような、つまり「手段の目的化」となっている場合、多くはこれに該当してくるだろう。

 もちろん、ソーシャルメディアを自分たちのビジネスに活用するにあたって、ソーシャルメディアが何かというものをきちんと知ることは重要である。だが、ソーシャルメディアを中心に置いた形で話を展開させすぎてしまい、そもそものビジネスの話が薄れた形で進んでしまう傾向にあるのだ。

 「なぜソーシャルメディアがソリューションになり得るのか」というロジックをきちんと構成できていない場合も、なかなか理解されない(言い換えれば“ソーシャルメディアのあるビジネス”をわかりやすい文脈で落とし込めない)結果につながってしまう。ともすれば現在成立している自分たちのビジネスの仕組みや、場合によっては組織に至るまで変化やインパクトが及ぶことにもつながりかねないわけだが、こういった点が意外と軽視されていることが多い。

 このような部分を明確にするためには、もちろん自分たちのビジネスゴールが、どういったものなのか、そして現状、このビジネスゴールへの達成を阻害している要因は何なのか、その上で、ソーシャルメディアはソリューションとなり得るものなのかを、きちんとロジカルに語れるようにしなくてはならない。この前提を踏まえた上で、ではどのようにしてプロジェクトを推進していくか、その具体的なアプローチについて、次回以降考えていきたい。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。