激しい価格下落が続く家電の王様「テレビ」の存在感が小さくなっている。だが、この状況は次世代テレビに向けた生みの苦しみと見た方がいい。技術の牽引役「携帯端末」の普及が、スマートで高精細な大画面テレビへの進化を後押しする。
米国でテレビ放送が始まってから70年。長く家庭向け映像技術の中心を担ってきた「テレビ受像機」が、テクノロジー・ドライバー(技術牽引役)の座を譲り渡そうとしている。代わってそこに座るのは、タブレット端末やスマートフォンといった携帯端末である(図1)。
今後数年は携帯端末が映像関連の技術やサービスの開発で主役となり、テレビという映像メディアを再定義する。放送やインターネットといった映像コンテンツの配信経路、そして表示画面のサイズの大小を問わない新しい映像メディアにテレビは生まれ変わる。
テクノロジー・ドライバーの交代という動きの背景には、テレビという映像メディアが転換期を迎えていることがある。インターネットを使った動画配信サービスや、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などの存在感が、これまで以上に高まっているからだ。視聴する映像コンテンツの選択肢が増えれば、ユーザーは必ずしも放送コンテンツを選ぶとは限らない。
これは同時に、映像を視聴する機器がテレビだけではなくなったことも意味する。「消費者にとって、テレビという機器が娯楽の柱という認識は薄れつつある」。野村証券 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム エグゼクティブ・ディレクターの御子柴史郎氏は、現在のテレビが置かれた状況をこう指摘する。