今回は「世の中のプロジェクトの典型的な失敗パターン」をご紹介したいと思います。

 私自身、これまでに数多くのプロジェクトを見てきましたが、うまく行っていないプロジェクトにはやはり共通したパターンがあります。これまでのおさらいも兼ねて、皆さんのプロジェクトにも同じようなパターンが見られないか、代表的なパターンと比較しながらチェックしてみてはいかがでしょう。

「プロジェクトのゴール」が曖昧

 まずはコレ。「何のために行うのか」、「何が実現されれば良いのか」が曖昧なままにプロジェクトが進められるパターンです。

 このパターンでは、プロジェクトに多くの影響が現れることになります。例えば、ゴールがないと最短ルートが見えずに非効率となりますし、プロジェクトのスコープを追加したいなどという要請があった場合の判断が難しいため、プロジェクト範囲拡大の要因となります。もっと言えば、プロジェクトの成功度合い(求められる価値をプロジェクトで生み出せたのか)を正確に評価することもできませんし、メンバーにとってもプロジェクトで働くことの意味が薄れ、主体性や意欲の低下にも繋がります。

 このパターンの厄介なところは、ゴールが明確化されていないことと、プロジェクトがうまくいかないことの因果関係が見えにくいことです。ボディブローによって徐々に蓄積されたダメージが様々な問題の事象となって少しずつ顕在化してくるようなものです。

 しかし、逆に考えると、「ゴールさえしっかりしていれば、プロジェクトに強固な軸を作ることができる」、ということでもあります。

 あなたは今進めているプロジェクトについて、「生みだすべき価値とその達成条件」を明快・簡潔に説明できますか?それはつまりプロジェクトの本質を考えることであり、それなりに時間も労力を要することではありますが、後々必ず効いてくるはずなのです。

段取りが大ざっぱ、または検証が不十分

 次は、作業項目やスケジュールなどの段取りをあらかじめ十分に考えていないパターンです。
プロジェクトには「やってみないと分からないから、走りながら考える」という部分もあって、最初から100%精密な計画を立てられるわけではありません。

 しかし、単に「まだまだ時間はあるし、追々考えればいいや」と言うノリで段取りをしっかりと練り上げないままにプロジェクトを進め、後からペース配分を間違えていることに気付き青ざめることになる、というのが良くある失敗パターンです。

 時間は戻せません。プロジェクト終盤になって取り返しがつかなくなって初めて1日の重みを思い知らされる前に、プロジェクトの段取りを可能な限り早い段階で精緻に組み立てておくことが重要です。もし段取りを考えた結果、「期間的に相当難しいな・・・」と青ざめても、それが分かるのが早いほど有効な対策を講じることが可能になるのです。

過小な見積もり

 プロジェクトにおいて「作業量」を正確に見積もることは非常に難しいことです。3日で終わると想定していた作業が実際には5日かかった、などということは頻繁にありますよね。これが積み重なることによって失敗するパターンです。逆に、見積もりが“過大”というパターンもあり、こちらもプロジェクトの投資対効果が下がって失敗に繋がりますが、やはり見積もりが過小であるパターンの方がかなり多いと思います。

 よくあるのが、見積もりの段階において間接的な作業の時間を考慮していないケースです。例えば、屋台のカウンターを設計する作業。単に設計図を書くだけではなく、関係する部品の設計者との調整やイスとのバランスの検討、作業の進捗状況についてプロジェクトマネジャーに報告する、設計した内容を上司に確認して修正するなど、調整や報告、確認などの付随する作業が必要になります。これらを考慮しておくことが過小な見積もりを防ぎます。

 また、プロジェクトスポンサー(お金の出し手)からの圧力によって、コストの圧縮を余儀なくされることもあります。この圧力に対して「根性でがんばるぞ!」と言って単純に見積もりを削減して予定コストを下げると、確実に失敗に繋がります(ある程度は頑張れても、限界はありますし長続きはしません)。かといってその要求を突っぱねることも、余程の理不尽でない限りは決して得策とは言えません。

 いろいろ検討の余地はあるはずです。プロジェクトのスコープを縮小する、既存の資産や製品を使う、目標とする品質レベルを見直すなど、交換条件を出しながら「バランスをどこに置くか」の交渉によって調整することが最適な解決方法です。