TwitterやFacebookをはじめ、現在のネットビジネスはソーシャルメディアが全盛です。ブランク氏もその価値を認めると同時に、まだデジタル化されていないソーシャルニーズは存在し、実現できるチャンスは誰にもあると語っています。(ITpro)

 10億ドルの企業を最短で構築する方法とは、人間の基本的なソーシャルニーズを、オンラインに展開する方法を見つけ出すことです。それを成し遂げ、最初の波に乗ったWeb/モバイル/クラウド関連のスタートアップ企業は、Facebook、Twitter、Instagram、Match.com、Pandora、Zynga、WordPress、LinkedInなどです。次はあなたの番です。

 今週(4月第3週)、私はニューヨークのコロンビア大学で、5日間にわたりリーン・ローンチパッド・クラスを教えました。このクラスでは、ビジネスモデルを探し検証するプロセスを教えます。しかし、どうすればスタートアップ企業の「これぞ」と言えるアイデアを創り出せるかというヒントは教えません。過去2~3年間で数百チームを教えましたが、ついにある生徒が「次の10億ドル企業のアイデアは、どうすれば考え出せるのですか?」とたずねてきました。

それは問題ですか、それともニーズですか?

 ビジネスモデルのバリュー・プロポジション(企業の製品やサービスを、格好良く表現した言葉)は、下記のいずれかの種類に分類できると、今になって私は信じるようになりました。

 一つは、一般消費者や企業の問題を解決し、処理する製品あるいはサービス。例えば、会計ソフトウエア、エレベーター、エアコン、電気製品、タブレット・コンピュータ、電気歯ブラシ、飛行機、電子メール・ソフトウエアなどです。

 もう一つは、人間の基本的なソーシャル・ニーズを満たす製品あるいはサービスです。例えば、友人関係、男女の交際、性、娯楽、美術、通信、ブログ、告白、ネットワーキング、ギャンブル、宗教などです。

ニーズをデジタル化すること=10億ドル企業

 友達関係、男女の交際、性、娯楽、美術、通信、ブログ、告白、ネットワーキング、ギャンブル、宗教などがなくても、私たちの心臓は鼓動し、肺は呼吸を続けるでしょうか。もちろん、し続けるでしょう。しかし、これらが私たちを人間らしくするものです。それらは、私たちの精神に生まれつき織り込まれているものなのです。私たち人間は、こうしたことを何万年もの間、続けています。

 皮肉なことに、デジタル世界の出現によって私たちの生活は効率的になったものの、 人と人が直接に相対して交流する時間は少なくなりました。しかし、人と人との直接の交流こそが、私たちの人間性を定義づけるのです。

 Facebookは、私たちが友人を必要とするニーズを、オンライン上の友人との交流によって再現しようと試みています。Twitterは、私たちがリアルタイムに情報を共有し、コミュニケーションすることを可能にします。Zyngaは、私たちがオンラインで娯楽に没頭することを可能にします。Match.comは、私たちがパートナーを見つけることを可能にします。

 これらソーシャル・アプリケーションはオンライン化されると同時に、タブレットやスマートフォンというデジタル・プラットフォームに移行しており、何億もの人が利用できるようになっています。今から10年のうちに、地球上の過半数の人たちが、これらのアプリケーションを24時間365日使えるようになるでしょう。良し悪しは別として、ソーシャル・アプリケーションは何十億もの人に使われるでしょう。

 これらはすべて、わずか5年以内に起こったことなのです。しかし、現在、すべてのソーシャルな交流がオンラインに移行し、最適に再現されているわけではありません。Facebook、Twitter、Instagram、Pandora、Zynga、LinkedInなどが、ソーシャル・ソフトウエアの頂点ではないのです。他の人たちが、もっと良いものを作るでしょう。他の誰かが、オンラインで実現できる、いまだかつて現れていない、あるいはいまだに満たされていないソーシャル・ニーズを見つけることでしょう。

 それは、あなたかもしれません。

学んだこと
―バリュー・プロポジション(製品あるいはサービス)には、二つの形態があります。一つは問題を解決するもの、もう一つが人間のソーシャル・ニーズを満たすものです。
―ソーシャル・ニーズとは、友人関係、男女の交際、性、娯楽、美術、通信、ブログ、告白、ネットワーキング、ギャンブル、宗教などです
―これまでは、人と人とが直接対面して交流していました。今は、それがオンラインに移行しています
―これらアプリケーションの市場規模は、世界中の全人類です
―それらは、正に究極のアプリケーションです

2012年4月19日オリジナル版投稿、翻訳:山本雄洋、木村寛子)

スティーブ・ブランク
スティーブ・ブランク  シリコンバレーで8社のハイテク関連のスタートアップ企業に従事し、現在はカリフォルニア大学バークレー校やスタンフォード大学などの大学および大学院でアントレプレナーシップを教える。ここ数年は、顧客開発モデルに基づいたブログをほぼ毎週1回のペースで更新、多くの起業家やベンチャーキャピタリストの拠り所になっている。
 著書に、スタートアップ企業を構築するための「The Four Steps to the Epiphany」(邦題「アントレプレナーの教科書新規事業を成功させる4つのステップ」、2009年5月、翔泳社発行)がある。