by Gartner
スティーブ・クラインハンズ リサーチ バイス プレジデント
亦賀 忠明 バイス プレジデント兼最上級アナリスト

 PCが「企業システムにアクセスできる唯一のデバイス」として君臨していた時代は、もうすぐ終わる。2014年までには、社員が個人向けに提供されているサービスを幅広いデバイスから利用できる「パーソナルクラウド」が主役になる。

 クライアントコンピューティングのトレンドは、PCフォーカスから、スマートフォンやタブレット端末、その他コンシューマ機器を含んだ幅広いデバイスへ拡大する。ユーザーは状況に応じて異なるデバイスを使い分け、クラウドサービスがこうしたデバイスをつなげる接着剤の役割を果たす。

 パーソナルクラウドの実現は、デバイスの使い勝手を飛躍的に高め、新たなレベルの柔軟な利用を可能にする。社員にアプリケーションやサービスをどう提供するか、企業は再検討を迫られる。

 「ポストPC時代」という言葉があるが、“PCの後”という表現はあまり正しいとは言えない。個人の生活や仕事の質を根本から改善する、全く新しいパーソナルコンピューティングのスタイルが到来した、と捉えるべきだ。

 以下、この新時代をけん引している五つのメガトレンドを紹介する。個々のトレンドは以前から存在していたが、それぞれが新しい方法で有機的に結合し、パーソナルクラウドの時代を形作る。

(1)コンシューマライゼーション

 このトレンドについて過去に起きた事象は、今まさに始まろうとしている大潮流の前触れに過ぎない。これまで特定の社員しか使えなかった技術が、役職を問わず大半の社員に開放される。インターネットやソーシャルメディアが社員に力を与え、社員一人ひとりがイノベーターになる。

(2)仮想化

 仮想化技術の進歩によって、柔軟性が生まれ、ユーザー環境の実装に対する様々な選択肢が広がる。PC時代に開発され、今やレガシー化しつつある業務アプリを新たな環境に展開することが可能になる。また、小型のデバイスが、巨大なコンピューティング資源にアクセスできるようになる。

(3)アプリケーションのアプリ化(App-ification)

 一つのアプリケーションを、状況に応じて様々なデバイスから利用できるようになる。これを実現するのが、デバイスの違いを吸収する「アプリ」であり、企業システムやクラウド上のアプリケーションに自由にアクセスできるようになる。

(4)セルフサービス型クラウド

 今や社員は、ネット上の膨大なアプリケーション、サービス、コンテンツを、自ら選択して使える環境にある。このことは、社員に「セルフサービス」の習慣をもたらし、自律的なIT活用をうながす。

(5)モビリティシフト

 モバイルデバイスは、パーソナルクラウドと組み合わせることで、ほとんどのコンピューティングタスクで使えるようになる。タッチやジェスチャーによる操作、音声認識や状況認識に見られるように、モバイルデバイスは高度化している。どのデバイスも、プライマリーデバイスとしての役割を果たせるようになる。