図1 地上アナログ放送を停波(NHK仙台放送局の送信所内の様子)
図1●地上アナログ放送を停波
(NHK仙台放送局の送信所内のようす)
[画像のクリックで拡大表示]

 2012年3月31日、最期まで残っていた東北3県(岩手県、宮城県、福島県)の地上アナログ放送は停波した(図1)。これで日本全土から地上アナログ放送の放送波が姿を消したことになる。

 仙台では、地デジ化へのカウントダウンイベントも開かれ、伊達政宗が地デジ化を先導するイメージでの地デジカーキャラバンが行われた。2011年7月24日に地上デジタル放送に移行した場所では特段意識はしていないことと思うが、東北3県は昨年の東日本大震災以降、地元住民に配慮し地上アナログ放送を継続していた。

 今年に入り、3県のデジサポへのアナログ放送に関する相談件数は、3月19日から25日までの1週間で5千件強に上ったという。同じ期間における九州のデジサポ相談件数は900件あまりだということなので、いかに東北が地デジ移行の最中であったことがうかがえる。なお、地デジ難視対策衛星放送経由の受付は終了しており、3県合計で4万強の世帯がその利用を行っている。

 4月の第1週に入ると問い合わせ自体は減少してきているが、同月下旬まで3県の数十カ所で相談員が常駐し、直通専用電話を設置した簡易相談コーナーも設けられるなど細かな対応施策が講じられてきている。

 また、3県の電気店などの売り場では1000店あまりで「街の地デジ相談コーナー」が設置されており、今も集合住宅などを中心に2台目テレビなどを買い換える事例も目立つという。小売業界の話題では、ローソンが450店もの店舗で告知の旗を立てたり、コールセンターなどの地デジ情報が書かれたパンフレットを用意した。無料で利用できる無線LANの店舗導入など、地域拠点作りに積極的なコンビニエンスストアの姿が垣間見られる。

 筆者は3月31日の停波の様子を見届けたいと考え福島県白河市に出向いた。白河市ではDpa(デジタル放送推進協会)の協力により、平日は市役所、土日祝日は「マイタウン白河」という公共施設で受信相談会が行われている。午前10時半すぎに相談会場に着いた時、一人の女性が簡易受信機の貸し出しを受けているところであった。

図2 NHK渋谷放送センターからも停波の様子を見守る
図2●NHK渋谷放送センターからも停波の様子を見守る
[画像のクリックで拡大表示]

 この地域では、富士見山にある中継局のほかに南白河というミニサテライト局が2012年3月に開局したばかりである。白河市周辺でも、場所によってはどちらを受信するかに知識が必要であろうから、こういった相談会は回数こそ減るだろうが、今後も続けられる必要があるように感じた。

 筆者は白河市周辺で、12時ちょうどにNHKや民放各局のアナログ放送画面が終了告知テロップに変わる様子を見届けた。その時、NHK渋谷放送センターでも、職員が3県のアナログ放送波を通信回線にIP化して集められた素材を通じ、アナログ放送の停止を見守っていたという(図2)。そして4月1日の午前0時を迎えると、NHKと各地のローカル民放局の職員が、それぞれのアナログ送信設備の回路を遮断する措置を講じ、日本の地上アナログ放送の歴史に幕が下ろされた。ちなみに、2011年度に地上デジタル移行に伴ってNHK受信契約が解除された世帯は17万2000件あまりだったという。