日本マイクロソフトは2012年4月、クラウド事業で日立製作所、NECと相次ぎ提携を結んだ。富士通とは既に同分野で提携済み。今回の提携でマイクロソフトと国内IT大手の協業が出そろった()。

表●マイクロソフトと国内IT大手3社との提携内容
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 ただし、富士通がマイクロソフトのクラウド「Windows Azure」の国内版を提供するのに対し、日立やNECはAzureを直接は提供しない。主力はあくまで自社のクラウドサービスであり、マイクロソフトの製品やサービスを取り入れ、商品力を高める狙いがある。マイクロソフトと国内IT大手のクラウド協業は第2幕に入ったと言えそうだ。

 今回の提携で日立は、自社のクラウドサービス「HarmoniousCloud」をマイクロソフトのAzureと相互接続し、両方を組み合わせて提供する。原則として、基幹系システムや顧客の重要な業務データは「国内で運営し信頼性や安心感があるHarmonious Cloudに置く」(クラウド本部の高橋明男担当本部長)。Azureと相互接続するのは、「日立が弱い海外でクラウドを用意したり、柔軟に性能を拡張したりといった要望に応える」(同)ためだ。

 国内データセンターの信頼性や安心感を強く訴えるのは、海外クラウドのリスクを慎重に見極めたい大手ユーザー企業を意識したからだ。米英ではテロ捜査などで、データセンターにある企業データも捜査対象になり得る。セキュリティや性能確保などでも、パブリック型からプライベート型まで柔軟に応じられる「日本型クラウド」の需要は底堅いとする。

 一方、NECはマイクロソフトのグループウエア関連製品群「SharePoint」「Exchange」などを採用し、金融や製造など業種別の業務支援向けクラウドサービスを開発、提供する。マイクロソフトはクラウド型グループウエア「Office 365」にも注力しているが、今回の協業ではNECは採用しなかった。開発するクラウドが「企業の個別要件に応じて構築するプライベート型が中心になる」(ITサービスビジネスユニットの藤岡忠昭主席主幹)ため、パッケージを基に作り込む必要があるからだ。

 例えば製造業向けでは、NECの部品管理(BOM)パッケージなどと連携し、設計変更や生産、販売調整といった社内手続きをグループウエアで可能にする。

 一方、富士通は、Azureを採用したクラウドサービス「FGCP/A5」を2011年6月から提供している。

 富士通との提携により、マイクロソフトは国内におけるAzureの認知度を高めることができた。さらに、大手企業の業務システム分野に早くリーチするため、日立やNECのクラウドサービスと連携する新たな拡販策を打ち出したといえる。