スマートフォンやタブレット端末を、本格的に業務に活用する時代に突入した。端末の管理やスマホ向けアプリ開発に目が向きがちだが、急務なのは社内ネットワークのスマホ対応だ。無線LANでの通信が前提となる上、PCとは異なる認証やアクセス制御の仕組みが必要になる。様々なデバイスを有効活用するために、社内ネットを今のうちに見直す必要がある。

 「いつ、どこで、どんなデバイスを使っても、セキュアに業務を進められるインフラを構築する」。トヨタ自動車は、同社としては初めて社内システムの通信インフラに、無線ネットワークを採用することを決めた。同社はこれまで、社内ネットワークで無線LANは使用していなかった。ここにきて、スマートフォンやタブレット端末といった「スマートデバイス」を有効に活用するため、無線LAN導入に踏み切ったのだ。

 ネットワーク構築作業を担当するのは、関連会社であるトヨタデジタルクルーズである。

 トヨタ本社はもちろん、支社や工場、グループ会社の拠点、さらに海外拠点などでも、無線LANを利用できるようにする(図1)。どの拠点で無線LANを利用しても、同じセキュリティポリシーの下でPCやスマホ、タブレット端末を使って社内ネットにアクセスする仕組みを実現する。

図1●トヨタ自動車が構築に着手した無線LANネットワークの概要
国内拠点や関連会社はもちろん海外拠点でも、スマホやタブレット端末を利用できる無線LANシステムを構築する
図1●トヨタ自動車が構築に着手した無線LANネットワークの概要
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 トヨタ自動車に限らず、スマホやタブレット端末といったスマートデバイスの活用を検討する企業は増えている。今や、数百台、数千台の規模で導入するケースも珍しくない。情報システム部門には、「セキュリティに配慮した上で無線LANを導入する」ことが求められてきた。

 「スマホのウイルス対策やMDM(モバイルデバイス管理)を実施しているから安全だ」という考えも早計だ。スマートデバイスの安全対策というと、こういった不正プログラム対策や、紛失や盗難に伴う情報漏洩などに目が向きがちだが、それでは足りない。

 端末そのもののセキュリティとは別に、端末が接続する社内ネットの対策強化が急務だ。スマートデバイスは無線LANや3G回線が前提となる上、Windows PCなどで利用するActive Directoryや資産管理ソフトも使えないものがほとんどである。

 スマホやタブレット端末を想定した、新たな認証・制御のシステムを今のうちに整備しておく必要がある。