前回の記事の後半で、『ソーシャルメディアはデジタルマーケティングの領域における一要素に過ぎず、デジタルマーケティング自体も企業におけるマーケティング活動全体の一要素に過ぎない』と、海外においてはきちんと認識されていることを紹介した。そして最後に、現場にいる担当者について、“彼らは「ソーシャルメディアマーケティング」でも「デジタルマーケティング」でもなく「マーケティング」をやっているのだ”と記した。

 彼らは、あくまでも「マーケター」の視点で、ソーシャルメディアを一つの「ツール」として利用しようという意識が常に働かせている。ブレずに全体を俯瞰する意識がきちんと備わっていると言ってもいいだろう。

自分たちの立場を正確に把握した上で戦略を立てる

 もちろん、ソーシャルメディアを「ツール」として利用するにあたり、その「ツール」ができること、できないことをきちんと把握することも怠っていない。

 具体的には、以前も本連載で述べた「ソーシャルメディアリスニング(傾聴)」をきちんと実行していることが多い。つまり、ソーシャルメディア上で、どのような会話が交わされているのかをきちんと分析している。その上で、自分たちがソーシャルメディア上でコミュニケーションしていくにあたって、きちんと広がるであろうストーリーやトピックを練り上げていくのだ。

 こうしたやり方は、特に新しいというようなものではなく、比較的古くから行われている。以前に知った例を紹介すると、ある企業では自分たちが発信するメッセージを考えていくにあたって、まずそのメッセージのレイヤーを図1のように「ブランド」と「プロダクト」に分けて考えるところから始めていた。この企業の場合「ブランド」という形でくくられるメッセージは「プロダクト」という形でくくられるものよりも上位の概念として位置付けている。

図1●ある企業で想定したメッセージを発信するにあたって想定したレイヤー
図1●ある企業で想定したメッセージを発信するにあたって想定したレイヤー

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