ロンドンのTech Cityを構成するのは、企業ばかりではない。大学や専門学校といった教育機関もTech Cityの重要な構成要素だ。これらの教育機関では、学生の創造性や起業精神を伸ばし、Tech Cityの未来の戦力となる人材を育成している。今回は、Univery of LondonのQueen Mary校とRavensbourneの2つを紹介しよう。
創造性と技術の“るつぼ”を目指す「Ravensbourne」
「Ravensbourne」(写真1)は、デジタルメディアとデザインに特化した大学である。もともとは1960年代に美術学校として設立され、デビッドボウイなども過去に通っていたことがある歴史ある学校だ。約10年前に新しい技術を創造することを目指すと宣言して方向転換し、現在は得意の創造性にテクノロジーを融合するスタンスで教育を実施している。
そうした考えに基づき、エンジニアリング、ファッション、アーキテクチャ、コンテンツ、ビジュアルエフェクトなどの各テーマについて、区別せずにひとまとめにして扱っている。学部による分類などもせず、ゲームテクノロジーなどを含め、すべての技術を隣り合わせで教えている。「クリエーティブなテクノロジーの“るつぼ”を作り上げた」(Head of Enterprise and InnovationのChris Thompson氏、写真2)。
目的に合わせ柔軟に離合集散できる校舎
2010年10月には、その哲学を反映させた形に校舎そのものを建て替えた。新校舎では、人々が区別なく自由に移動しながら、いろんなグループで集まれるように壁などのしきりをできるだけ減らした(写真3)。それぞれの大きなフロアーはらせん階段状につながり、フロアーの間はシームレスに移動できるようになっている。中心部には大きな吹き抜けを作り、それらのフロアー同士が見渡せるようにした(写真4)。
実際に授業を行うときには、これらのスペースを柔軟に活用する。ほとんどの授業はグループのディスカッションが中心になるが、人数に合わせた区画のスペースを利用したり(写真5)、大きなスペースの端同士を使ったりする。こうすることで、教室をまとめたり分けたり自由にできる。そのための収納式のホワイトボードも各フロアーの各所に設置してある(写真6)。