経営に資する情報システムは、経営者の強いコミット無くしては生み出せない。業務のやり方を変えることに抵抗するユーザー部門への説得も欠かせないし、システム障害などリスクに立ち向かうことも求められる。そのことを自覚した経営者の“覚悟”を聞いた。

 システムの開発や導入の際に、経営者がどれくらいプロジェクトにコミットするかで、その成否が分かれることが多い。特に経営者が求める戦略性のあるシステムは難易度が高く、業務のやり方の変更を利用現場に迫るだけに、様々な困難に直面する。経営者が強い意志を見せることが、成功のための前提条件だ。

 ITコストの厳格な管理やシステム障害の対処策の策定・実行なども“社長マター”である。ビジネスに直結するようなシステムでは、経営者が直接コミットする形でのITコスト管理や緊急時対応がなければ、ビジネスの成功自体がおぼつかないからだ。

システム刷新は経営の責任

 「私が社長として決断したことのなかで一番自慢できると思っているのは、基幹システムを新しいものに切り替えたことです。今まで言ったことはありませんが、個人的には社長としての最大の功績だと思っています」。大和証券グループ本社の社長だった鈴木茂晴氏(現会長)へのインタビューの際、飛び出した発言だ。

 従来の基幹システムは1980年代後半から使っており、ITベンダーからは「芸術の域に達している」と言われるほど、スパゲティ状態のシステムだった。どこにどのような影響が及ぶか分からないので新たな機能を付け加えるのが難しい、極めて遅れたシステムだったという。

 そこで鈴木氏は社長に就任すると同時に、システム刷新を決意する。社長就任の際の記者会見で、「大和証券のリスクはシステムだ」と宣言したのだ。「経営トップになると、自分の役割というのは、ある程度分かるものです。将来を考えると、システム刷新は一番の役割だろうと思っていました」。鈴木氏はそう振り返った。

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