IPDCフォーラム(ホームページ)は2012年4月4日、都内で技術検討部会の平成23年度下期成果発表会を開催した。技術検討部会では、IPDC(IP Data Casting)を使った放送・通信連携サービス、特にホワイトスペースを活用したサービスやデジタル放送の補完サービスとしてスマートフォンやタブレット端末を用いたダブルスクリーンサービスを実施する上での課題を抽出し、この課題に対する検討結果について「IPDC技術仕様指針書」としてガイドラインをまとめた。今回は、本報告会で報告されたIPDC技術仕様指針書(ガイドライン)の概要を紹介する。

図●1
図●1 3つの検討課題
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 IPDCフォーラムではこれまでに、V-High帯を利用する全国向けマルチメディア放送「ISDB-Tmm」の運用規定をベースに仕様の拡張や新規策定が必要な箇所を抽出したガイドライン「ホワイトスペースにおけるIPDC技術仕様指針書」(平成22年度)、テレビとタブレットを連携させるダブルスクリーンサービスをIPDCにて実現するうえでの技術的な課題と解決策を整理しドキュメント化した「IPDCを用いたダブルスクリーンの実現に向けた技術検討」(23年度上期)を策定してきた。

 今回、技術検討部会では、改定放送法の施行を背景に、ホワイトスペースに限定せずデジタル放送全般に適応範囲を拡大し、汎用化/共通化できる仕様の策定を目標として、(1) IPDCを利用したサービスの多様化、セキュリティの担保を実現するための「IPDCデータの振り分け方」(報告会では「IPDCデータID振分け」と説明)、(2) IPDC対応受信端末の普及に資するオープンかつ共通的な開発環境を実現するための「アプリケーションAPI」(報告会では「IPDC拡張用アプリケーションAPI」と説明)、(3) 複数端末でコンテンツ同期制御を実現するための「マルチスクリーン型コンテンツ構成情報(構造化メタデータ)」の3つの課題に対するガイドラインを策定した(図1)。

IPDCとは

 IPDC(IP Data Casting)について簡単に説明すると、インターネットで利用されているIP(インターネット・プロトコル)技術をベースにして、通信・放送の伝送路の区別なくIPマルチキャストによりIPデータを配信すること。4月1日からサービスを開始した、モバイル向けマルチメディア放送「NOTTV」の放送方式であるV-High帯利用の全国向けマルチメディア放送「ISDB-Tmm」、欧州を中心に展開されている地上デジタル放送規格「DVB-T(Digital Video Broadcasting-Terrestrial)」をベースとしたモバイル向けデジタル放送規格「DVB-H」でIPDCが運用されている。

 なお、IPDC方式としてISDB-TmmとDVB-Hでは、放送などの片方向の伝送路を用いてデータ配信(IPマルチキャスト)を行う通信プロトコルであるFLUTE(File Delivery over Unidirectional Transport、RFC 3926)と、IPパケットの多重化方式であるULE(Unidirectional Lightweight Encapsulation for Transmission of IP Datagrams over an MPEG-2 Transport Stream、RFC4326)を採用している。