ライフスタイルでは「現実のふれあい」を重視している。ネットの利用は進展するが、リアルとのバランスで悩む――そんなビジネスパーソンの生活の“将来像”が調査から明らかになった。

 日経BPコンサルティングと一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は共同で、ビジネスパーソンがライフスタイル、社会、企業の3分野でどのような将来像を抱いているかを明らかにする調査を2012年1月に実施した。これから分野別に3回に分けて、調査結果の主要ポイントを解説する。

ビジネスパーソンに期待度と実現時期を尋ねる

 調査は、ビジネスパーソンを対象に、将来の「出来事や状態」を表現した文章を提示し、「そうなってほしいか」(期待度)と「いつごろまでに実現すると思うか」(実現時期)を尋ねた。提示した「出来事や状態」は、ライフスタイル(25項目)、社会(23項目)、企業(24項目)の合計72項目である。実現時期は「10年以内」までの回答の合計を実現率としてまとめた。

 回答者に尋ねた「出来事や状態」は、将来の在り方を示すキーワード、例えば「強い個の創出」や「スペンドシフト」「マーケティング3.0」などを想定し、それを反映させた文章を用意した。例えば、「従来の価値観や枠組みにとらわれず、自己実現を重視することが一般的になる」や「個人のお金の多くが、モノではなくサービス(体験や情報など)に使われるようになる」というものである。中には、「今、あなたが勤めている会社/団体が消滅する」という挑発的な文章も用意した。

 調査対象は有職者、ビジネスパーソンで、日経BPコンサルティングの調査モニターなどから集めた。事前調査を行い、将来の社会や個人、企業の在り方に関心の高い方を選び、さらに本調査に進んでもらった。回答者は20歳代から50歳代まで合計500人である。このため、調査結果は現役のビジネスパーソンの考え方であり、世間一般の考え方を代表しているものではないことに注意が必要だ。

ネット活用は着実に進展

 まず、3分野の中で「ライフスタイルの将来」の結果について解説する。

 ネット利用が進展する中で、現実のふれあいや体験を重視したい気持ちが強いことが分かった。「現実の世界におけるふれあいや体験を重視することが一般的になる」は、回答者の8割以上が期待していた(図1)。一方で、「ネット上のコミュニティサイトで過ごす時間が現在の2倍以上になる」は約3分の2が否定した。回答者の属性によらず、過度なネット依存に対する強い拒否感がある。自由記述では「ネットとリアルのバランスを求める」との声も上げられた。

図1●ライフスタイルに関する期待度と10年以内実現率
図1●ライフスタイルに関する期待度と10年以内実現率(現実のふれあい重視、ネット利用など)
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 一方で、個人の暮らしにおける手段としてのネット活用は着実に進みそうだ。「一般の人がネットで意見を表明することが普通になる」や「自分の考えや知識、行動をネット上でほかの人と共有することが一般的になる」「普通の人が、ネットを通じて社会活動に参加したり、社会貢献することが一般的になる」は、いずれも10年以内の実現率が6~7割に上った。ネット関連の項目は、期待度の高低を問わず10年以内実現率が高い傾向がある。好むと好まざるとに関わらず、ネットを使ったライフスタイルは到来するだろうとの認識がある。

 ネット関連項目の多くは、若年層ほど期待率が高い傾向にある。20歳代と40歳以上で大きく違ったのは、「自分の考えや知識、行動をネット上でほかの人と共有することが一般的になる」、「何らかの目的や考えのもとに、ネットを通じて人が集まることが一般的になる」など。「普通の人が、ネットを通じて社会活動に参加したり、社会貢献することが一般的になる」も若手の期待率が高い。ただ40歳代以降でも5~6割が期待しており、いずれの世代にも受け入れ易いネットの活用法である。現時点で、ネットを通じた社会貢献等を積極的に行っている人は回答者の2割に満たないが、今後さらに拡大する可能性が高い。

 将来のライフスタイルに関する懸念点の自由記述では、「セキュリティ」に対する不安が多数見られた。「個人的な情報(写真・映像、ファイルなど)も、その多くをネット上に保存し利用するのが一般的になる」については、期待する人としない人がきっ抗したが、これもセキュリティ面への不安が理由と見られる。