売上高が1500億~3000億円規模の国内ITサービスの準大手グループも、ようやく海外展開を本格化し始めた。ITホールディングス傘下のTISは2012年1月、東南アジア地域では同社初となる現地法人「TISI(シンガポール)」を設立。4月までに営業を開始する。「超円高に危機感を持つ顧客がこぞってアジアに進出している。我々も今踏み出さないと相手にされなくなる」。TISIの岡本安史社長は危機感をあらわにする。

 シンガポールには新日鉄ソリューションズが現地法人「NS Solutions Asia Pacific」を2011年12月に設立。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)も2011年4月に支店を設けた。この1年間で準大手グループの3社が相次いで東南アジア市場への足掛かりを作ったことになる()。

表●売上高が1500億~3000億円規模の国内ITサービスが設立したシンガポール拠点と、東南アジアでのサービス概要
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 顧客の海外進出が増えていることに加え、東南アジア地域のIT市場が大きく伸びていることも背景にある。IDC Japanの調べでは、東南アジア地域のIT市場は、経済発展に伴い急速に拡大中。2012年には2009年比で約3割増の586億ドルになる見込みだ。成熟し低成長が続く国内IT市場に安住していては、「新たな成長機会を失ってしまう」(CTCの斎藤康弘シンガポール支店長)との焦りも透ける。

 最も積極的な事業展開をもくろむのが新日鉄ソリューションズだ。3社では唯一、「2015年に年10億円規模」という明確な目標を掲げており、オセアニア地域への事業拡大もシンガポールから狙う。現地企業のM&A(合併・買収)を活用する方針も明言する。

 事業の中心となるクラウドサービスはシンガポールでデータセンターを借りて基盤を構築。IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)や仮想デスクトップ、業務ソフトをクラウドで展開する。日系企業に加え、将来は現地企業へサービス提供する。

 一方、TISは日系企業向けにERP(統合基幹業務システム)導入や、IT関連業務のヘルプデスクを展開する計画。CTCはITインフラ導入を中心に、日系企業へサービス提供する予定である。ただ、両社とも売り上げ目標は非公表でクラウドの提供も未定だ。

 3社とも日系企業の支援にとどまっていては、海外拠点での大きな収益は見込めない。現地企業へのサービス提供へ早期に踏み込むことが、東南アジアの成長を自社の収益拡大につなげるカギになる。