第2回第3回の事例は、いずれもオープンソースのIP-PBXソフトである「Asterisk」を利用している。その利用を着実に広め、音声を使った新サービスを生み出す基盤ともなっているのが、フュージョン・コミュニケーションズのIP電話サービス「FUSION IP-Phone」だ。Asteriskで構築したIP-PBXとの接続を可能にしているため、Asteriskの採用事例では定番のIP電話サービスになっている。

 ただし、これまでFUSION IP-PhoneにAsteriskを接続する際は、接続できるバージョンが限られていた。Asteriskの1.4.26.3のみの対応で、かつ同社が提供する修正プログラムをAsteriskに適用する必要があった。だが、2011年10月19日に開始した「B2BUAサービスβ版」では、FUSION IP-PhoneにAsteriskの全バージョンが接続できるようになった。フュージョン・コミュニケーションズ側に設置したB2BUA(back-to-back user agent)サーバーが通信制御信号の差分を吸収するからだ。

図1●従来のFUSION IP-Phoneと、B2BUAサービスの違い
図1●従来のFUSION IP-Phoneと、B2BUAサービスの違い
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 そして2012年4月16日、これまでβ版だったB2BUAサービスが同社の正式な商用サービスとなった。同社のAsterisk事業の発案者であり、Asterisk関連の事業を推進する営業第一部 副部長 兼 アスタリスク推進室長 兼 クラウド推進部 副部長の鎌田武志氏に同社のIP電話サービスをAsteriskに開放した理由や経緯などを聞いた。

AsteriskにFUSION IP-Phoneを開放した理由は。

写真1●フュージョン・コミュニケーションズ 営業第一部 副部長 兼 アスタリスク推進室長 兼 クラウド推進部 副部長の鎌田武志氏
写真1●フュージョン・コミュニケーションズ 営業第一部 副部長 兼 アスタリスク推進室長 兼 クラウド推進部 副部長の鎌田武志氏
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 NTT東西の「ひかり電話」によって(編集部注:NTT東日本では2004年に集合住宅向け、2005年に戸建て向けに一部地域で提供を開始)、IP電話は“普通の電話”の置き換えととらえられるようになった。そうしたタイミングで、「IP化によってもっと電話を進化させていきたい」という動きも止まってきた。050番号の伸びも鈍化してり、「なんとかこの状況を変えていきたい」という気持ちが発端だった。

 ともすればオープンソースのAsteriskは自社のIP電話事業の“敵”にもなる。だが、新しいことをしていくためにはそうも言っていられない。そこで4年ほど前にAsteriskに関連する事業を検討し始めた。