米国のLinux Foundationが発表した調査報告書によると、回答者の81%がLinuxの専門知識を持った人材の採用を2012年の重要事項として挙げていることが分かった。中でも引っ張りだこなのは、3~5年の業務経験を持った中級レベルのLinux技術者だ。

 Linuxの普及促進を目的とする非営利組織のThe Linux Foundationは2012年2月16日、Linux技術者の求人状況に関する調査報告書「2012 Linux Jobs Report」を発表した(図1)。調査によるとLinux技術者の求人市場は拡大していて、回答企業の81%が、Linux技術者の採用を2012年の最重要事項の1つとして挙げていることが明らかになった。

図1●「2012 Linux Jobs Report」の調査概要
図1●「2012 Linux Jobs Report」の調査概要

 企業がLinux技術者を必要としている理由については、半数の回答者が社内システムのサポートを挙げた。企業内システムでLinuxの重要性が急速に高まっている実態が見えてくる(表1)。

表1●2012年にLinux技術者の採用を増やす主な理由
表1●2012年にLinux技術者の採用を増やす主な理由

 求めるLinux技術者のスキルは、システム開発が67%、システム管理者が55%となった。ITマネージャー(20%)や外部コンサルタント(15%)など上流工程のスキルを求める企業は少ない。実際、企業の75%が3~5年の経験者を探している。

 従業員数500人以上の大企業だけでみると、Linuxの中核技術に関する専門性やノウハウを持つ技術者を求める傾向が強い。アプリケーション開発者が49%、カーネル開発者が46%となった。

国内での需要の高まりはこれから

 調査報告の結果から、Linux技術者の需要が拡大している印象を受ける。注意が必要なのは、この調査の回答の7割が欧米企業だということだ。日本を含む国や地域の企業はわずか1割。調査の結果が必ずしも日本のLinux技術者に対する現状を反映したものではない。

 ただし、Linux技術者の必要性は、日本でも着実に高まっているようだ。Linux技術者認定試験の「LPIC」を運営するLPI-Japanの成井 弦理事長は、「Linux技術者の人材が足りないので紹介してほしいという相談が増えている」と述べる。

 LPI-Japanでは、Linuxの普及を共同で促進する「ビジネスパートナー制度」を設けている。成井氏が相談を受けるのは、このパートナー企業だという。パトーナー企業が運営しているオンラインショッピングサイトや宣伝用のWebサイトなどが、Linuxやオープンソースソフトウエア(OSS)で構築されるようになったことが背景にある。

 大手オンラインサービスやゲーム/動画/音楽などのコンテンツ配信サービス、ソーシャルネットワーキングサービスなどでは、既にプラットフォームの構築でLinuxやOSSが採用されている。こうした状況を反映してか、多くのLPIC関連書籍を執筆している中島 能和氏は、「最近はクラウド基盤を構築できる、仮想化技術の専門知識を持つ、カーネルをチューニングできるなど、Linuxの中でも高度な専門知識やノウハウが求められているようだ」と話す。

 コンピュータリソースの主役は、かつてメインフレームからサーバーに交代し、現在はクラウドに移りつつある。2~3年後には日本でも、Linux技術を持つことが求人市場で強みになる可能性が高い。