楽天銀行でのIFRS(国際会計基準)対応プロジェクトは、楽天グループとしてのIFRSへの取り組みの第一弾という位置づけとなる。

 楽天本体でIFRS対応プロジェクトを立ち上げたのは、2010年夏のことだ。きっかけは、楽天の事業活動がよりグローバルになっていることだった。M&A(合併・買収)も頻繁に実施している。

トップの鶴の一声で決まる

 その際、「株式交換の時に、先方の評価とこちら側の評価を異なる会計基準で実施すると、調整が必要になる。ガラパゴス化している日本基準よりも、IFRSのように世界的に通用する基準でレポートしたいとの思いがあった」と、大塚年比古 執行役員財務本部長兼国際業務室長は説明する。海外投資家の持ち株比率が高まっていることや、海外での資金調達のしやすさなどもIFRSの採用を考える要因だった。

 IFRS適用を考えるようになった直接のきっかけは、日本でIFRS強制適用の議論が出てきたことにある。しかし、「我々のIFRSへの取り組みは単なる制度対応が狙いではなく、国際戦略に必要との認識があったから。自見金融担当大臣の適用見送り発言は、当社の意思決定には影響していない」と、大塚執行役員は説明する。

 最終的には「三木谷(浩史 会長兼社長)の『やるぞ』という鶴の一声で決まったというのが、偽らざる状況」(大塚執行役員)。楽天がこの時期にIFRSの検討を始めたのは、IFRSの任意(早期)適用を視野に入れていたとみられる。2012年4月時点で、同社は任意適用の方針は明らかにしていない。

 IFRS対応プロジェクトは2010年秋から、楽天銀行で始めることになった。楽天グループ全体の中で、楽天銀行をはじめとする金融系の存在は大きい。「売り上げの40%を銀行が占めている。バランスシートで見ると、グループ全体で約2兆円、そのうち銀行が約8000億円の資産を保有している」(同)。IFRS適用によるバランスシートへの影響は大きいと予想された。

 さらにIFRSの中でも、楽天銀行が直接影響を受ける金融商品会計関連の基準については論点が多かった。「IFRS適用に伴う論点を洗い出したところ、その半分は金融商品関連だった」(同)。全社としてIFRSに対応するにあたり、銀行から始めるというのはごく自然な流れだった。