ITベンダーの技術者と営業担当者、ユーザー企業のシステム部員が、情報システムの分野で活躍するために必要な専門スキルは何か――。日経コンピュータは「2012年版 いる資格、いらない資格」調査を実施し、その答えを探った。

 ユーザー企業189社のシステム部長、ITベンダー75社の人事担当者、そして1000人を超える技術者やシステム部員らの回答結果から、2012年にあなた自身が磨くべきスキルと、取得すべき資格を見つけ出そう。

 案件に応じて、いくつかの職種をこなせる。仕事のカバー範囲が広く、融通が利く──。こうした複数の専門スキルを持つ人材「多能スペシャリスト」を、積極的に育成する企業が相次いでいる。

 日本IBMは現在、アーキテクトやコンサルタントなど専門職の「多能化」に力を入れている。本職以外の専門スキルも習得した人材を、高く評価する人事制度を導入。また、異なる専門職との交流を促すために、専門職の情報交換の場となるSIG(スペシャル・インタレスト・グループ)を設け、一人の技術者を複数のグループに参画させている。

 様々な事業モデルを作れるクラウドコンピューティングが台頭してきたことで、「幅広い専門スキルがないと、状況に応じた提案や課題解決ができなくなった」と、日本IBMのクラウド&スマーターシティ事業ソリューション事業部の西村淳一部長は指摘する。同社が2011年1月に創設した「IBMクラウドマイスター制度」では、コンサルティングもできるITアーキテクトなど多能な人材6人を認定した。そのスキルを求め、様々なプロジェクトから声が掛かっているという。

 多能スペシャリストを求めるのは、ITベンダーだけではない。ユーザー企業でも多能なシステム部員を育成し始めた。例えばリクルートでは、Webサービスの企画からWebサイトの設計、開発までを一人で3カ月で完遂させる新人研修を行っている。「他人に頼らずすべてを自分で実践させることで、自律したIT人材が育つ」と、MIT Unitedプロジェクト推進部の河野彰博ゼネラルマネジャーは話す。