日本に在住の読者には「銀聯カード」と聞いてもまだピンと来ない人のほうが多いだろうか。「銀聯カード」とは、中国の銀行カード連合組織である「銀聯」の下で発行されるデビットカードである。これに加盟する銀行のATMがあれば、他の銀行でも現金を引き出せるキャッシュカードとしての基本機能のほか、銀聯に加盟する店舗では、商品やサービスの代金を銀聯カードで支払える。支払いは即時引き落としとなる。

 中国では2010年末時点でクレジットカードの発行枚数が2.1億枚にとどまる一方、銀聯カードの発行数は24億枚、2011年上半期には26億枚に達したとも伝えられている。まだまだ与信に慎重にならざるを得ないお国柄からか、銀行預金という裏付けのある銀聯カードが一般人にも、企業・店舗にも受け入れられているのだろう。

海外旅行者にメリット多い銀聯カード

 中国人にとっての銀聯カードの主なメリットの1つは、国外でのショッピングの自由度が高まることだ。銀聯カードの利用範囲は中国国内にとどまらず、現在では110カ国で利用できる。日本もその1つだ。利用できる店舗はデパート、家電量販店、ドラッグストアなどが中心で、最近はほかの業態にも範囲を広げつつある。

 また、中国は外貨現金の持ち出しに規制をかけており、許可なく持ち出せるのは5000米ドル相当まで。5000~1万ドル相当で許可証が必要になり、それ以上は持ち出すことさえ禁じられている。その点、銀聯カードを保有し、自身の銀行口座に預金を潤沢に用意しておけば、国外でも支障なくショッピングを楽しめる。また、国外で現地通貨が必要になった場合にも有用だ。日本であれば、ゆうちょ銀行、セブン銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行の各行のATMで、1日あたり1万元(約12万円)相当額の日本円を引き出せる。

 銀聯の発表によると、2011年夏期(7-8月)の国外銀聯カード使用状況のトップ3はマカオ、香港、台湾。日本はタイに次ぐ第9位だが、利用額は増加傾向にあるようだ。日本経済新聞の報道によれば、日本国内における2011年9月の総利用額は55億円強となり、東日本大震災前の2月(50億円)を上回って過去最高を更新したとのことである。

 また、銀聯の発表によれば「中国のゴールデンウイーク」といわれる国慶節(10月1日)前後の休暇中、国外の銀聯カードによる取引額が対前年同期比で48%増加したという。銀聯カードの存在が、富裕層を中心とする中国からの観光客の買い物熱を下支えしているといっても過言ではないだろう。