計画書が充実したプロジェクトは、管理が行き届いているような印象を与える。だが、その計画書をプロジェクトメンバーがどこまで読み込み、理解しているだろうか。計画書に記載されたルールをかみ砕いてメンバーに浸透させ、計画書に命を吹き込むことでプロジェクトを円滑に推進していく必要がある。

小林 慶志郎
マネジメントソリューションズ 中小企業診断士


 プロジェクト管理の標準化は進んでいても、それが定着しない会社があります。この問題については『第76回 標準化が定着しない理由』で、PMOがテーラーメイドを行うべきと述べています。前回の『第82回 「本当に必要な管理」を見極める』でも、しっかりとテスト計画書が作成されていたにも関わらず現場のメンバーに定着しなかった事例を紹介しました。この事例もテーラーメイドの失敗が大きな原因でした。ただし、私はもう一つ失敗の原因があると考えています。そもそも標準化された計画をメンバーが理解できていなかったのです。

 計画書を見慣れたPMOからすると、いつも通りの資料かもしれませんが、新しく参画したメンバーからすると、複雑な資料に見えるかもしれません。そこでPMOがこれらの資料をかみ砕いてメンバーに伝えていく必要があるのです。

ルールは詳細なだけでは伝わらない

 みなさんがイメージしやすいように一つ例を挙げます。

 あなたは仕事中に、自分の会社の社内規定や就業規則、業務規定をいちいち参照するでしょうか。実際には、自分の業務にかかわる部分だけを分かりやすくフロー化したものが作成されていて、それだけを見ていることが多いと思います。厳密なルールはもちろん必要ですが、もし閲覧できる資料が分厚い社内規定集しかなかったとしたら、現場のあなたは「もっと分かりやすく説明して!」と叫んでしまうことでしょう。

 プロジェクトでも同様です。統制をとるために詳細なルールは必要なのですが、その伝え方には工夫と相手に対する配慮が必要になります。ここに、PMOが価値を発揮できるポイントがあります。