この連載では、Facebookを中心とした「ソーシャルメディア」を企業でどのように導入するかをテーマにしている。前回は「Facebookを社内活性化に使う」というテーマで説明した。

 最終回も、これに関連して、ソーシャルメディアと人間関係、特に「上司と部下の関係」「良いチーム」について説明する。これまでこの連載では、社内が“ソーシャル化”できていない企業がFacebookを業務に活用しようとしても結局はうまくいかないことを述べてきた。

 実際、「上司を友達登録したくない」「部下に友達申請しにくい」といった話はよく聞く。社内の人間関係が悪くない場合でも、こうしたことは往々にして起こり得るため、ソーシャルメディア社内活用のハードルとなっている。

 いわんや、社内の人間関係が悪い場合は、最悪である。ソーシャルメディアは増幅効果を持つ。ダメな関係は、よりダメな関係になり、組織や上司、部下個人をもダメにする可能性があるのだ。では、事例をみてみよう。

Facebookの利用で成果を出して頭取にアピールしたい

 A行は中堅の地方銀行である。創業は古く、今年設立100周年を迎える歴史のある銀行だ。地元密着の営業活動で業績をあげていたものの、最近では景気の低迷やインターネットバンクの台頭もあり、過去のような十分な業績はあげられない状況である。

 これに危機感をもったのが、最近就任した頭取である。頭取は入行以来、営業畑、企画畑、財務畑などA行の主流部署を経験しており、行内でも優秀と評判の男であった。彼は、頭取就任にあたって以前から考えていたことを実行したいと思った。

 それは、A行のブランド刷新である。A行は地域の高齢者には知名度が高いが、若年層や中堅層にはどちらかというと泥臭いイメージが強く、これがA行の顧客層のバランスを欠く原因になっていた。

 そこで、頭取は広い世代に明るく先進的なイメージをもって欲しいと考え、100周年を機会に、大規模なブランド刷新をすることにしたのである。ブランドカラー、ロゴなど目に見えるものだけでなく、社員の心の中までマインドを徹底をしたいと考えた。

 なぜなら、行員一人ひとりが、自行を愛し、銀行の満足度を高めることができなければ、顧客に真のサービスはできないからだ。このように、A行では、顧客向けのアウターブランディングだけでなく、社員向けのインナーブランディングも充実するブランド活動方針を採用したのであった。

 頭取は、特にインナーブランディングをどう進めるかについて悩んでいたが、たまたま取引先のITベンダーの社長に誘われたソーシャルメディアのセミナーに参加し、「Facebookを使ったらうまくいくのではないか」と考えるようになった。そこで、社員全員にFacebookをやってみるように徹底することにしたのであった。

 これに強く反応したのが、営業企画部の課長である鈴木氏(仮名45歳男性)であった。頭取のFacebook利用推進の方針を聞いて、この機会にFacebookの利用で成果を出し、頭取にアピールしたいと考えたのだった。

 鈴木氏は営業部門や企画部門を経験し、今の頭取の部下として信頼が厚かったが、一方で部下には厳しく、成果は自分に、失敗は部下に押し付けるところがあった。上にはうまくアピールして評価されるが、一方で部下からの評判が良くないタイプの管理職だったのだ。