世界中からバイヤーが買い付けてきた衣料品やアクセサリーを店舗やネットで販売する、セレクトショップの最大手であるユナイテッドアローズ。同社はスマートフォンやタブレット端末を意欲的に活用している。
店舗では2010年にiPhoneを導入。店員が売り場で品番を入力すると、数量やサイズ、色、商品の画像を含む全店舗の在庫情報をその場でリアルタイムに確認できる。続いて2011年にはiPadを導入し、店員がお薦めのコーディネートなどを来店者に提案できるようにした(図1)。
対象は店舗だけではない。2011年から、部長以上の管理職全員にiPadを配布した。メールとスケジュールを社外から操作できるように設定しており、「どこからでも仕事の指示を出せるようにしたい、とするニーズに応えることができた」と、事業支援本部情報システム部の高田賢二部長は話す。
「コンサルタント集団」目指す
スマートフォンやタブレット端末を活用した一連の業務改革は、IT部門が提案したものだ。以前は、IT部門はこうした提案を一切出さなかった(図2)。
「IT部門は以前から、利用部門の評価が高かった。何しろ、『現場の要望を120%満たします』という姿勢を採っていたのだから」。高田部長は、IT部門を率いるようになった2008年当時の状況をこう説明する。
2008年の時点で、IT投資の対象はもっぱら、利用部門の要望に基づく「便利ツール」の開発だった。便利ツールは、売り上げの集計や帳票の作成といった現場の作業を支援するものだ。IT部員は日々の仕事の7割を、ツールの開発に充てていたという。
高田部長が部長に就任したのは、経営層がIT部門の現状を問題視したからだった。同氏は航空会社のシステム子会社での経営企画部門に始まり、映画CM制作会社のIT部門、大手ベンダーのコンサルティング部門を経て、ユナイテッドアローズに入社した。「IT部門を、社内改革を先導できるコンサルタント集団にする。これが自分のミッションだった」と高田部長は話す。
高田部長がまず手がけたのは、今後5年間を見据えた中期IT戦略の策定である。これまでIT部門は、中期計画を立てたことがなかった。