第2回は、まずはトレンドを概観し、2012年2月27日~3月1日までスペイン・バルセロナで開催されたMobile World Congress(MWC) 2012での発表や取材から明らかになったメーカー別の最新動向を見ていこう。

LTE対応がポイント

 今年は、Cortex-A15を利用したプロセッサのサンプル出荷も始まり、ハイエンド領域での性能向上もほとんど途切れることなく進んでいきそうだ。また、LTEへの対応が一つのポイントとなりそうだ。ハイエンドスマートフォンでは対応は必須になりつつあるが、LTEまで統合するかどうかは、ターゲットとする地域によって違いが出てくる。

 例えば、米国や日本ではLTEはハイエンドからメインストリームに進みつつあるが、いまだにLTEの導入が本格的に始まっていない地域もある。そうなると、メインストリーム領域を狙うプロセッサに3Gを統合すべきか、あるいはベースバンドは統合せずにLTEを使えるようにすべきか、もしくはLTEまで統合してしまうべきなのか、といった選択を迫られる。

 さらに悩ましいポイントは、米国ではLTE、HSPA+が急速に普及しつつあることだ。2011年のInternational CESでは、LTE対応のハイエンドスマートフォンが多数登場したが、2012年はメインストリーム領域にもLTE対応が要求されている。つまり、3Gのみを統合したアプリケーションプロセッサは、米国ではメインストリーム領域で利用できなくなる可能性があるのだ。

 ローエンドは、3Gのみでアプリケーションプロセッサとベースバンドプロセッサを統合したものに固まりつつある。これは世界的な傾向として見ることができる。メインストリーム領域は、ハイエンドに比べると数量も多く、コストもローエンドよりは大きい。この領域での予測間違いは、大きな影響を受ける可能性がある。

 以下では各メーカーごとの最新動向を解説する。なお、メーカーによってモバイルデバイス用のプロセッサの呼び方に違いがあるが、ここではAndroidなどのオペレーティングシステムを実行するプロセッサを「アプリケーションプロセッサ」と呼び、アプリケーションプロセッサとは別に通信を司るプロセッサを「ベースバンドプロセッサ」と呼ぶ。また、ベースバンドプロセッサとアプリケーションプロセッサが統合されている場合には、「アプリケーションプロセッサ」で統一している。ただし、製品名になっている場合などは、メーカーの表記に従うこととする。

Broadcom

写真1●低価格スマートフォンとして海外で人気の韓国Samsung Electronics製「Galaxy Yシリーズ」
写真1●低価格スマートフォンとして海外で人気の韓国Samsung Electronics製「Galaxy Yシリーズ」
米Broadcomの「BCM21552」を採用する。プロセッサは最大1GHz動作のARM11。7.2Mビット/秒のHSPAに対応する。
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 米Broadcomは、無線LANやBluetoothなどのデバイスでパソコンユーザーに知られるが、通信関連のデバイスメーカーとして基地局から端末向けまで幅広い製品ラインアップを持つ。そのBroadcomの主力アプリケーションプロセッサが「BMC21552/21553」だ(以下BMC21552/3と略す)。これは、韓国Samsung Electronicsの「Galaxy Yシリーズ」などに採用されているプロセッサだ。Galaxy Yシリーズの「Y」はYoungの略とされ、低価格化し、若年層を狙った製品だ(写真1)。