3月末、米AppleのTim Cook最高経営責任者(CEO)が中国を訪問したと伝えられた。同氏は昨年6月にAppleの最高執行責任者(COO)として訪中しているが、8月にCEOに就任してからはこれが初めてとなる。その目的は当初不明とされていたが、その後訪問先が次第に明らかになるにつれ、Cook氏の狙いについてさまざまに報じられるようになった。

iPhoneの販売や直営店展開拡大へ

 その一つが中国市場への投資拡大だ。Appleにとって同国は米国に次ぐ巨大市場。携帯電話の加入者数は世界一で、昨年はパソコンでも米国を抜いて世界最大の市場となった。しかし、同社のスマートフォン「iPhone」向けサービスを手がける通信事業者は、加入者ベースで同国第2位China Unicom(中国聯通)と第3位のChina Telecom(中国電信)の2社。Appleは同国トップのChina Mobile(中国移動)といまだ契約できていない。

 2012年1月末時点におけるChina Unicomの加入者数は2億300万人、China Telecomは1億2930万人といずれも膨大だが、2社を合わせてもChina Mobileの6億5500万人にはかなわない。米Wall Street Journalは、Cook氏は昨年6月にCOOとしてChina Mobileを訪れたが、そのときから両社はiPhoneをChina Mobileが推進する「TD-LTE」方式の移動体通信サービスに対応させることで協議していると伝えており、今回も交渉進展に向けた協議があったと見られている。

 一方で米Bloombergは、Appleが直営店「Apple Store」を拡大する計画だと伝えている。というのもAppleの中国直営店は現在、北京の2店舗、上海の3店舗、香港の1店舗の計6店舗しかない。2008年に北京で1号店を出した際の目標は2年間で25店舗というものだったが、当時のリテール担当上級副社長Ron Johnson氏が昨年6月に同社を去ったことなどもあり、計画に遅れが生じている。Cook CEOは今回、北京市市長とも会談しており、市場拡大について協力強化を約束したとBloombergは伝えている。

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