語り始めたデータをさらに深く分析する。例えば、Webサイトのアクセス履歴や検索ワードなどを分析することで、これまで分からなかった真実が見えてくる。大規模サイトが取り組む、本格的なビッグデータ活用の先進事例を紹介する。

ドワンゴ
毎日100GBのログを読み 無理せず有料会員増

 一日あたり約100ギガバイト(GB)の動画がユーザーから投稿され、累計で400テラバイト(TB)近くの動画データを蓄積している、国内最大級の動画サイト「ニコニコ動画」(図8)。日本でも指折りのデータ保有者であるドワンゴが、本格的にビッグデータ活用に乗り出した。狙いは、有料会員増を通じた売り上げの拡大だ。

図8●ニコニコ動画の画面と会員数の伸び
アクセス履歴を分析。すべての動画を対象に、動画視聴後の離脱率やプレミアム会員への移行比率などを集計。トップページのレイアウトを変えるなどしている
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2300万会員の履歴を分析

 ドワンゴは、昨年からユーザーのアクセス履歴の分析に力を入れている。

 ニコニコ動画の登録会員数は2011年9月末時点で2369万人。分析対象となる履歴のデータ量は、1日100GB単位で増えていく。「以前はデータ量が膨大すぎて捨てていたが、システムを増強したことで分析できるようになった」とドワンゴの千野裕司 執行役員ニコニコ事業本部長は言う。

 効果は既に出始めている。月額525円の「プレミアム会員」の数は、2011年9月末は139万人と、1年前と比較して41万人増加した。2006年のサービス開始以来、ニコニコ動画は長年赤字を続けてきたが、今は営業黒字が定着している。

 かつては会員データベースを分析対象にしていたため、有料会員になりやすい年齢層などの情報しか分からなかった。しかし、アクセス履歴を分析することで、「どんな動画を見たら、有料会員になりやすいのかが把握できるようになった。今では、すべての動画を分析対象にしている」と千野執行役員は説明する。

 さらに、データを解析することで検索やレコメンドの精度を向上させている。初めてアクセスしたユーザーには万人に受けそうな動画を、好みが分かる程度までにアクセス履歴が蓄積できると、ターゲットを絞った「濃い動画」(千野執行役員)を推奨する。こうして、個々のユーザーにとって居心地のよい環境を作れれば、自ずと有料会員が増えると考えている。