ジェイアイエヌの冨田晋輔執行役員国内事業本部長兼アイウエア事業部長
ジェイアイエヌの冨田晋輔執行役員国内事業本部長兼アイウエア事業部長
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 眼鏡専門店「JINS(ジンズ)」を展開するジェイアイエヌ。同社のCIO(最高情報責任者)相当職を務めるのは、冨田晋輔執行役員国内事業本部長兼アイウエア事業部長である。IT(情報技術)コンサルタントなどを経て2008年にジェイアイエヌに入社した冨田執行役員は、ITシステムを駆使した在庫削減改革に2008~2009年に取り組んだのを手始めに、社内の様々な業務改革で手腕を発揮している。

 冨田執行役員が仕事で意識しているのは、相手の目線に合わせて語ること。「同じ事象を伝えるにしても、経営トップ、本部のマネジャー、販売店の店長では受け止め方が異なる。それぞれの立場に合わせ、情報を加工して伝えることを心がけている」(冨田執行役員)。

 このようなモットーを徹底した施策の1つは、「ワン・サード・プロジェクト」と呼ぶ店舗オペレーションの改革である。同社では2009年に発売した戦略商品の軽量型モデル「エアフレーム」が大ヒットした副作用として、店舗の業務量が大幅に増加。例えば眼鏡を作るための処方せんをその都度コピーする作業に時間がかかり、顧客を待たせてしまうなどの問題が顕在化していた。そこで数百に上る間接業務を洗い出し、無くしたり簡素化したりして3分の1に減らすことを目指したのである。2010年9月から本腰を入れて取り組んだ。

 まず、冨田執行役員はオペレーション改革の必要性を店舗の従業員らに訴えた。「改革に取り組むことで、最終的に店舗の業務が楽になるというイメージが皆に伝わるようにした」(冨田執行役員)。経営課題や期待できるコスト削減効果などを伝えても、従業員たちには改革の必要性は伝わりにくい。むしろ日々の業務の悩みを解決できるイメージを持たせたほうが効果的というわけだ。

 このように現場に改革への意識を醸成する一方、本部には「店舗オペレーション改革室」を新設。同室のスタッフに、スーパーバイザーと呼ばれる現場出身の従業員3人を抜擢した。本部主導型の方が改革を推進しやすい一方で「現場を知らない人たちが勝手に決めている」と捉えられかねない恐れもある。そこで現場を熟知したスタッフに業務の洗い出しを担当してもらい、現場からみても説得力のある取り組み内容に仕上げていった。

 改革室のスタッフらにも、相手の立場に合わせて情報を伝達することを求めている。「彼らが作成する報告資料は、奮闘ぶりを伝えようと一生懸命になるあまり、経営陣が目を通すものとしては冗長になりやすい」と冨田執行役員は指摘する。そんな資料が出てきた時には「どのくらい業務量が減ったのか」「さらにどれだけ刈り取れるのか」「そのために何をすればよいのか」というポイントに絞って作るとよいなどと繰り返し指導した。

 このような冨田執行役員のリーダーシップが効果を発揮し、1年間が経過した2011年9月には業務を半分に集約、残りについてもITを活用する ことで削減するめどをつけた。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること

・トップが素早く意思決定するのに十分な分量に削ぎ落として情報を伝えることを心がけています

◆普段読んでいる新聞・雑誌

・日本経済新聞、日経MJ、週刊ダイヤモンド、日経ビジネス、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

◆最近読んだお薦めの本

・『諸葛孔明』(陳舜臣 著、中公文庫)

陳舜臣氏の作品は客観的な歴史背景が描かれています。その背景を踏まえて各武将の立場に自分がなった場合、どのように決断するかを考えながら読みました

◆よく見るインターネットサイト

・日経ビジネスオンライン、東洋経済オンライン、ダイヤモンド・オンラインなどのビジネス系サイト

・フェイスブック、ツイッターで、顧客の声を日々観察しています

◆ストレス解消法

・休日に2人の子供と遊ぶこと。自動車に乗ってよく公園に出かけています