スマホ大国、韓国――。韓国の携帯電話の総加入者に占めるスマートフォン加入者の割合は40%弱で、国民4900万人のうち2000万人以上がスマホを使っている計算だ。加えて1日数万人がスマホに加入しているという。

 一方の日本は、MM総研の調べによれば2012年3月31日時点で、総加入者に対するスマホの割合は22.5%・2522万契約という。伸び率は前年同時期比で81%増だ。急速な伸びに耐えきれず、NTTドコモやKDDIが通信障害を起こしたのは記憶に新しい。

SKテレコムは通信トラブルの防止に活用

写真●SKテレコム本社の概観
写真●SKテレコム本社の概観

 スマホ活用で日本に先駆ける韓国は、通信トラブルを未然に防止するためもBRMS(ビジネスルール管理システム)を活用している。例えば、韓国の携帯電話事業者トップのSKテレコムは2006年に既にBRMS製品のinnoRuesを導入済みだ(写真)。

 携帯電話網の通信状態監視システム「IAM(インテリジェント・アクセス・ネットワーク・マネジメント・プラットフォーム)」に使っている。2010年には3G網向けに改修し、「10万人が一つのスタジアムに密集しても、つながりにくいということはない」と、SKテレコムのパク・サンジン シニア・マネージャーは胸を張る。

ベテランのノウハウを入力しネットワークの予防保守を実施

 IAMは韓国全土の2500人のネットワーク保守技術者が使う。BRMSは予防保守に一役買っている。BRMSには「ベテラン技術者が何を持ってトラブルに事前に気が付くかをルール化して入力した」(パク氏)という。「こういった通信状態が続いたら機器交換のサイン」「そろそろ通信がひっ迫しつつあるので機器を増強したほうがいい」といったルールを登録しているとみられる。技術者は毎日IAMが提示する問題点に対して予防保守を実施している。

 BRMSは技術者のスキルを常に最新に保つことにも効果があるとSKテレコムは実感している。「2Gから3G、そして4Gへと通信技術は日々進化している。その通信技術の世代ごとに技術者を抱えることはコスト面で難しい。過去の保守ノウハウをBRMSに入力することで保守に関する知識を外出しできるため、技術者は常に最新の技術を習得して品質向上に全力を注ぐことができる」(パク シニア・マネージャー)。同社は今後は4G対応も進めていく計画だ。

 ITベンダーのインスプリットは「ANDSF」をinnoRulesで構築した。ANDSFは3Gや4G、無線LANなどから最もつながりやすい回線を選ぶアプリケーションだ。通信キャリア側が強制的に接続回線を決めることもできる。同社はinnoRulesにエリア、通信状態、混雑度といったルールを入力した。韓国3位の携帯キャリアLGユープラスに納品している。

 日本ではNTTドコモが携帯電話の基本料金と割引サービスの相関を管理する目的で、なうデータ研究所が開発したBRMS「NaU DSP」を採用している。日本の通信業界でもBRMSの活用範囲が広がりそうだ。