“BRMS(ビジネスルール管理システム)ブーム”に沸く韓国では、サムスングループや現代自動車グループだけでなくSKグループやLGグループもBRMSの導入を急いでいる。そのブームは韓国金融住宅公社や韓国鉄道といった公共機関にまで広がっている()。

表●韓国でBRMSを活用するユーザー企業の例
表●韓国でBRMSを活用するユーザー企業の例
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韓国で広まるBRMS

 SKグループでは韓国トップの携帯電話事業者のSKテレコムが、携帯電話網の監視システムにBRMSを採用。故障につながりやすい予兆の検知によって、トラブルの未然防止に役立てている。

 LG電子は2010年に構築したグローバルSCM(サプライチェーン管理)システムでBRMSを使っている。「BRMSのおかげで、グローバルレベルで物流業務の変更スピード向上を果たせた」。LGグループのシステム子会社で韓国2位のITベンダーでもあるLG CNSのイ・ジョンソク金融/通信事業本部海外事業担当部長は胸を張る。

 LG CNSはこれまで金融系システムの大規模再構築プロジェクトにおいてBRMSの導入を広げてきた。例えば2011年には業界1位の新韓カードで、2007年には業界4位の新韓生命保険において、2005年には新韓銀行と興国銀行の合併において、それぞれの基幹系システムの再構築でBRMSを活用している。

日本にもBRMSを持ち込む

 「韓国の金融業界はスピードと低コストを何より求める。商品の複雑な組み合わせといった業務ルールを可視化できるBRMSを使わざるを得ない」(イ担当部長)。この流れを決定づけたのは、韓国が1997年の国際通貨基金(IMF)の支援を受けたことだという。

 「コスト削減の一環でオープン化の波が押し寄せた。コスト削減には寄与したが業務のスピードアップには寄与しなかった。そこで2000年代にBRMSに注目が集まってきた」。韓国IT事情に詳しいアーネスト・ビジネス・ソリューションズの孫成一社長は話す。孫社長は韓国でのBRMSブームに注目し、韓国で採用が相次ぐBRMS製品の「innoRules」を開発する韓国イノルールズに出資。日本での総販売代理店として営業を進め、オリックス銀行がこの4月から日本での第1号ユーザーとしてシステムを稼働するまで至った。

 LG CNSもBRMSの日本普及を狙う。同社は日本で2年間のマーケティングを実施した結果、まずは金融系企業にBRMSの効果が高いと考え、2011年2月にSBIホールディングスとの合弁企業「SBI-LGシステムズ」を設立した。

 「日本のシステム開発は丁寧で高品質だが、もっとビジネスのスピード向上に寄与できるような機能を備え、かつコストを下げる開発手法に転じる時期に来ているとみている」とイ担当部長は話す。新会社では現在、日本と韓国の開発の“いいとこどり”の開発標準の策定を急ピッチで進めているという。