BRMS(ビジネスルール管理システム)を導入するのはサムスングループだけではない。「現代自動車、現代重工業など、現代系のグループ会社でBRMSを全面導入していく」。こう意気込むのは現代HDSでシステム事業本部のマネージング・ディレクターを務めるユン・ヨンチュン氏である(写真)。

BRMSを幅広い業務で積極的に活用

写真●現代HDSのユン・ヨンチュン システム事業本部マネージング・ディレクター
写真●現代HDSのユン・ヨンチュン システム事業本部マネージング・ディレクター

 現代HDSは現代海上火災保険のシステムについて企画から運用までを一手に引き受けるシステム子会社だ。現代海上は業界2位の損害保険会社で、ユン氏は2011年まで現代海上のCIO(最高情報責任者)を務めていた。同氏は過去、5年間ほど現代海上の日本支社に勤務していた経験もある。

 「BRMSの活用範囲の広さでは韓国一」とイノルールズのシム・ヒョンソプ副社長が証言するほど、現代海上はBRMSを積極的に活用している。2010年2月に各種損害保険の契約管理と支払い、経理の3システムを、innoRulesで全面刷新した。商品管理やコード管理、保険料計算、営業管理などの機能をinnoRulesで作りこみ、社員など3万人以上が利用する。

 ユニークなのは、業務ルールの入力体制だ。商品企画や自動車保険の審査など、システムを利用する立場にある12部門・70人の「ルール開発者」が、BRMSに業務ルールを入力し、その内容を自らテストしている。「ルール開発者はもちろんITの専門家ではないが、努力してinnoRulesの操作を覚えてもらった。業務のスピードアップには利用部門自らがBRMSを操作できるようにすることが最も効果があるからだ。このためBRMSの選定には入力のわかりやすさを重視した」とユン氏は話す。

1万種類以上の業務ルールを入力

 システム開発では、ルール開発者が中心になる。分析と設計はルール開発者と現場利用者で進める。分析では対象業務の範囲を決めて業務ルールを切り出す。設計では業務ルールを詳細化して構成単位(モジュール)を洗い出して、モジュールごとに既存部品の再利用ができないかなどを検討する。ルール間のインタフェースもここで検討する。

 ルールの実装とテストはシステム部門の協力を仰ぐ。innoRulesは業務ルールを実行するプログラムのみを自動生成する。業務ルールのプログラムと連携する画面やデータベース、他システムとの連携機能はシステム部門が開発する。そのほかにシステム部門は、本番環境への移行作業や性能面の改善作業、ルールの最適化作業、分析や入力、開発についての標準化を策定・教育する作業なども支援する。

 BRMSを本格導入してから2年経つ現代海上は現在、1万種類以上の業務ルールを入力しているという。一つの業務ルールは最高で12階層・300モジュールを持つものもあるという。効果についてユン氏は「保険商品の開発期間を2カ月から3~4週間へと半減させた。商品が増えてもシステム要員を追加せずにまかなえている。プログラミングが不要になり、システムの品質も向上した」と満足そうに話す。

現代グループへの全面展開を協議中

 記者が取材した翌日、ユン氏は現代自動車のIT担当者に面会する予定があることを明らかにした。さらに現代自動車グループや現代グループのIT子会社とも面会し、innoRulesの全面展開を協議しているとも明らかにした。

 「サムスングループがinnoRulesで業務スピードを高めることに対抗するためか」との記者の質問に対しユン氏は当然という顔つきで頷いた。「今や企業の競争力を左右する最大の要因はスピードだ」と話し、ユン氏はインタビューを締めくくった。