米アップルの「iPhone 4S」が世界中で大人気だが、その部品や組み立ての多くを台湾企業が担っていることをご存じだろうか。先日アップルから公開されたサプライヤー156社のうち、台湾勢は39社を占める。
パソコンのマザーボードのシェアも台湾企業が世界一である。ブランド名はなかなか表舞台には出てこないが、人口2300万人ということを考えると驚異的な数字といえる。日本の高度成長時代に下請けで培ったノウハウを全面的に生かし、世界のIT産業を支えている。今の主流は、台湾で開発・設計し、中国の工場で安価に大量生産するというビジネスモデルだ。
中国の輸出企業ランキング上位100社のうち、台湾系企業が金額ベースで約40%を占める。最近では中国でのビジネスノウハウを生かすべく、日系企業との中国合弁事業にも積極的で、台湾から誘致団を送り込んで日本各地でセミナーを開催している。
ビジネススタイルは合理主義
台湾が親日的なのはよく知られている。歴史的・政治的な背景で国交はないが、台湾への観光客は、日本人が2009年まで長い間1位の座を占めていた。逆に台湾人の海外旅行先としても、日本が不動の人気を誇る。東日本大震災への義援金は、人口が少ないにもかかわらず台湾が最も多かった。
日本へ向ける好意は世代ごとに異なると思われるが、多くの世代で日本のアニメや漫画は大人気だし、北海道や京都などの観光地に毎年のように出かける台湾人も多い。思うに、地震が多い島であること、義理堅くて勤勉な国民性であることなど、日本と台湾の共通点は多い。これが両者を結びつけているのかもしれない。台湾に住んでいると、日本の古き良き昭和を思い出すこともしばしばある。
しかしビジネススタイルは日本とは全く異なる。台湾は中小規模の企業が多く、自分で事業を立ち上げる意欲、いわゆる起業家精神が旺盛だ。組織で動くより、合理主義に基づいて個人で動く傾向がある。
先般、台湾の通信事業者と保守の打ち合わせしたところ、当社と意識がかみ合わないという出来事があった。台湾事業者は回線のアラーム(自動警告)が上がってきても、ユーザーから申告がなければ修理に出向かないという。クレームがあればすぐ直すが、そうではない場合は別の都合でアラームが出ている可能性がある、というのが彼らの言い分だ。
しかし日本の事業者は、予防保全的にアラームが出れば何でも直す。この点を何度言ってもなかなか納得してもらえない。この件は「では我々がユーザーだから申告したら直してくれ」と交渉したら解決した。うーん。台湾人は本当に合理的なのだろうか。