最新のOSやソフトウエアをインストールして触るのが大好きな筆者のような人間にとって、仕事と趣味の両面において日常的に欠かせない存在となっているのが「仮想化ソフト」である。仮想化ソフトなしでは本連載はもちろん、筆者が手がける技術検証系記事の多くが成り立たないか、執筆するのに相当苦労することだろう。それほどまでに重要なソフトとなっている。

 ITpro読者の中にはご存知の人も多いと思われるが、仮想化ソフトとは、パソコン内に「箱庭」を作り、仮想的なパソコン(仮想マシン)を独立した存在として動作させることができるソフトである(写真1)。

写真1 パソコン内に「箱庭」を作り仮想的なパソコンを独立して動かすことができる
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 仮想化ソフトとひと口に言っても様々な種類があるが、主に使われているソフトをざっくり分けると2種類に分類できる。一つは、仮想マシンの制御に特化した軽量なソフトウエアとして、物理パソコン上で直接動作させる「ハイパーバイザ型」と呼ばれるタイプ。もう一つは、Windowsをはじめとするクライアント向けOS(ホストOS)の上で、通常のアプリケーションとして動作させる「ホスト(OS)型」などと呼ばれるタイプである。

 一般に、ハイパーバイザ型仮想化ソフトはシステムリソースを大量に消費するクライアントOSという余計な“足かせ”がない分、パフォーマンスに優れる。その半面、動作するハードウエアをかなり限定したり、管理や運用に比較的高いスキルが要求されたりするケースが多い。このため、本連載のように様々なOSを次々とインストールして試すのが目的なら、普段使い慣れたクライアントOS上で手軽に利用できるホスト型仮想化ソフトの方が適している。本記事でも以下、ホスト型仮想化ソフトの導入方法を紹介していく。

 「OSを複数インストールする」という観点から見た仮想化ソフトの最大のメリットは、「インストール要件を満たした物理パソコンを一々用意しなくても済む」という点にある。筆者のように、日常的にOSを入れたり消したり取っ替え引っ換えするユーザーにとって、この恩恵はとても大きい。インストールするOSごとにパソコンを用意しようとしたら、何台あっても足りなくなる。

 メリットはほかにもある。例えば、(1)BIOS設定画面やOSインストール途中の画面などをキャプチャできる、(2)作成した仮想マシンを記憶媒体に入れて持ち運べる、(3)特定時点の仮想マシンの利用状態を保存しておき、後から簡単に元に戻せる、(4)物理パソコン側のリソースが許す限り、複数の仮想マシンを同時に動かせる---といったメリットが挙げられる。

 もちろん、仮想化ソフトにも弱点はある。仮想化ソフトがエミュレートするハードウエアの仕様の違いなどが原因で、OSインストールがうまくいかないケース(意外とある)や、様々な理由により仮想マシンではなく物理パソコンでなければ困るようなケースがある(例えばCPUの機能を直接利用することを前提としたハイパーバイザ型仮想化ソフトを使うケースなど)。

 しかし、そうしたレアケースを除けば、仮想化ソフトはOSインストールに関して大いに役に立つこと請け合いである。ホスト型なら普段使っているパソコンにすぐ導入でき、他のアプリとの相性問題でパソコンが不安定になるようなことも少ない。利用を止めるのも簡単だ。まだ入れていないという人には、ぜひこの機会にインストールしてみることをお勧めしたい。本連載でも既に過去2回の記事で仮想化ソフトを活用してきたし、今後の記事でも度々利用する予定である。

代表的な2種類の無償ソフトをWindowsで試す

 今回と次回で、米ヴイエムウェアの「VMware Player」と、米オラクルの「Oracle VM VirtualBox」(以下、VirtualBoxと表記)という無償で入手および利用できる代表的な2種類の仮想化ソフトを導入してみることにしよう。これら2種類の仮想化ソフトを、現在主流のクライアントOSであるWindowsが稼働するパソコンに導入して使うための手順を紹介する。WindowsのバージョンはVista/7を前提としているが、XPでも基本的に同じである。

 同様に無償で利用できるWindows向けの仮想化ソフトとしては、他に米マイクロソフトが開発・配布している「Microsoft Virtual PC」(Windows 7 Professional以上向けの専用版は「Windows Virtual PC」)という製品もあるが、過去の実績や入手可能な情報の多さ、Windows以外のOSでも利用できる点などを考慮して今回は上記2ソフトを選んだ。

 それでは、さっそくVMware PlayerおよびVirtualBoxのインストールを始めよう。両ソフトは、1台のパソコンに同時にインストールして問題なく利用できる。それぞれのソフトごとに得意不得意があり、また、新バージョンのリリースタイミングによって、どちらか一方のソフトだけが最新のOSを動作させられるというケースもよくある。このため、2種類共インストールすることをお勧めしたい。

 二つのソフトのどちらからインストールしても構わないが、本記事ではVMware Playerからインストールを始めることにする。VirtualBoxから先にインストールしたい、あるいはVirtualBoxのみインストールしたいという人は、今回は飛ばして次回をお読みいただきたい。