この連載では、Facebookを中心とした「ソーシャルメディア」を企業でどのように導入するかをテーマにしている。前回は「ソーシャルメディアの炎上」について「企業で公式にソーシャルメディアを使う/使わないにかかわらず、炎上対策は必要である」ことを説明した。

 炎上は、公式アカウントだけが発端になるとは限らない。顧客の不満や社員のうっかりの書き込みが発端となって燃え広がる可能性がある。広がったら消火する必要があるが、消し方が分からなければさらに燃えてしまう。だから消火知識が必要になるのである。

 ソーシャルメディアを企業が完全にコントロールするのは難しい。「うまく使えばソーシャルメディアでよくなる」が、「使い方を知らないとダメージも増幅する可能性を持つ」。このことを理解し、付き合うことが必要だ。

自社に心底満足していない社員の作った商品やービスは何かが欠ける

 では、今回のテーマに移りたい。今回はインナーブランディングがテーマである。顧客向けのブランド戦略であるアウターブランディングを重要と考えて取り組む企業は多いが、そういった企業に限って社員向けのインナーブランディングを疎かにすることが多い。

 一般に、顧客向けに自社のブランド価値を認知してもらい、ファンになってもらうような外向けの取り組みをアウターブランディングと呼ぶが、これには社員向けの取り組みである「インナーブランディングをどうするか」が重要になる。

 「自社の良さは何か?」「迷ったとき、何を拠り所にするのか?」「なぜ、企業として活動できているのか」――。これらを突き詰めて、社員全員がぶれずに企業活動できるようにするのが、インナーブランディングの成果の本質である。

 残念ながら実態は、企業のイメージキャラクターや広告、評判作り、イベントにはコストを惜しまない一方で、社内の人間関係には無頓着で社員の不満には耳を傾けない経営者が多い。こういう企業が顧客からの信頼を勝ち取るのは難しい。

 顧客は社員の心を見抜く。自社に心の底から満足していない社員の作った商品やサービス、接客には何かが欠けるものだ。こういう状況で顧客がロイヤリティを感じる訳がないのである。

 皮肉なことに、「顧客満足度を高めろ」「ブランディングをどうにかしろ」「お客さま第一」と現場の尻を叩けば叩くほど、空回りして、社員の心は会社から離れ、ブランディング戦略が崩壊するのである。

 では、早速事例をみてみよう。