イベント「オープンソースカンファレンス(OSC)2012 Tokyo/Spring」が2012年3月16日と17日の2日間、東京都日野市の明星大学で開催された。政府・自治体でのOSS活用をテーマとしたトラックOSC.governmentや、OSS貢献者賞の表彰式など多くのセッションが行われた。

写真●OSC 2012 Tokyo/Spring OSC.governmentの会場
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 オープンソースカンファレンスはオープンソース関連コミュニティが集まるイベント。2004年から日本各地で開催されており、今回が70回目となる。100を超える団体が参加、2日間でのべ約1700人が訪れた。

震災の極限状況で生まれたイノベーション

 OSC .Governmentは、2010年からOSCで開催されている、政府・自治体でのOSS活用をテーマとしたトラック(関連記事 : OSC2010.GovernmentレポートOSC2011.Governmentレポート)。OSC 2012 Tokyo/Springでは4つのセミナーが行われた。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)国際標準推進センター非常勤研究員/マーケット分析WG 主査/災害対応プロジェクトチームの岡田良太郎氏は「『第5回地方自治体IT調査』の現場より ~3.11が産んだソフトウェア・イノベーション」と題して講演した。岡田氏は調査で被災地におもむき、自治体の情報システム担当者に話を聞いた。そこで見たものは、震災であらゆるものが失われた中でなんとかして業務を遂行するために生み出したイノベーションだったという。

写真●IPA 国際標準推進センター非常勤研究員/マーケット分析WG 主査/災害対応プロジェクトチーム 岡田良太郎氏
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 例えば宮城県多賀城市では、5日間で被災者相談窓口のためのシステムを開発する必要に迫られた。外部に依頼している時間はない。内部で開発する時間もない。何か使えるソフトはないか、藁をもつかむ思いで探しまわって見つけたのが、OSSのCRM(顧客管理システム)であるSugarCRMだった。3日間で調査、検証、2日間で構築、テストして窓口開設に間に合わせた(仙台市主催のセミナー「東日本大震災と自治体ICT」における多賀城市の講演資料)。SugarCRMの存在はおろか、CRMという言葉も知らなかったという。「しかし、担当者たちの強い目的志向によって、適切なソフトウエアを探し当てることができた」(岡田氏)。

 他にも、GIS(地理情報システム)を被災者支援に活用した相馬市や、OSSの被災者支援システムSahanaとAndroidタブレットを避難所支援に活用した岩手県などの事例を紹介(関連記事)。岩手県では、避難所から仮設住宅へと被災者が移り始める時期にあえてこの新しいシステムを導入した。その決断の理由は、やがて再び来る次の災害に備えるためだったという。

 震災後、被災者支援や復興支援のために多くのサービスやアプリが開発された。ボランティアで作られたサービスも多く、OSSを採用しているものも多い。それは「『個』の力が『集団』になり、さらに『社会』の力になる動きだった」と岡田氏は言う。

写真●震災後に立ち上がった被災者支援や復興支援のためのサービス
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