写真1●MWC2012の会場
写真1●MWC2012の会場
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 2012年2月27日から3月1日まで、スペインのバルセロナで開催された世界最大のモバイル見本市「Mobile World Congress 2012(MWC2012)」は、入場者が6万7000人を記録し大盛況となった(写真1)。これは対前年比で10%以上の伸びという。筆者は27日と28日に出席し、モバイル分野における主たるプレーヤーにどのような変化が見られるのかを探った。

 MWCの出展ブースは「ハードウエア」「アプリケーション」「サービス」及び「ミドルウエア」などのテーマによる展示スペースがあれば、企業群が集合して垂直統合的に自社製品をアピールする展示スペースもある。

ソニーは携帯を世界でのコンテンツ流通における主役にしようとしている

写真2●MWC2012で講演する平井一夫代表執行役副社長
写真2●MWC2012で講演する平井一夫代表執行役副社長
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写真3●ソニーモバイルの展示は、エリクソンブースと隣接
写真3●ソニーモバイルの展示は、エリクソンブースと隣接
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 ソニーは2012年2月16日にエリクソンの保有するソニーエリクソンモバイルコミュニケーションズの株式を全取得する取引を完了し、社名をソニーモバイルコミュニケーションズに改めた。この取引完了の結果、同日付で同社はソニーの100%子会社となった。

 ソニーにとり、今回のMWC2012がその直後の世界的規模のイベントであったため、展示会前夜の26日には、4月1日付けでソニーの代表執行役社長兼CEOに就任する平井一夫代表執行役副社長が現地にかけつけた(写真2)。同社のキックオフパーティー会場で「One Sony」を標榜し、一つのユニークIDで携帯電話(スマートフォン)とテレビ、パソコン、ゲーム機器を横断的にコンテンツ利用できるような各種コンテンツ配信ソリューションを展開していく姿勢をアピールした。ソニーにとってネットワーク対応の製品群の融合をいかに加速させるかが課題となってきている。対Appleの戦略を考える上でデジタル家電に強力な製品群を抱えるソニーの強みを生かす上で、非常な重要なポイントになると位置づけられそうだ。

 ソニーモバイルの展示は、エリクソンブースと隣接する形で行われた。完全子会社化後も、ソニーがエリクソンとの協業を続ける意思を感じた(写真3)。例えば、デモされた新製品である「Xperia P」「Xperia U」はどちらも、ST-Ericsson製の「1 GHz STE U8500 dual core-processor」を搭載している。ソニーモバイルは携帯電話事業をスマートフォンに最適化させる時、エリクソンの部品や販売ネットワークなどが引き続き必要との判断であろう。

写真4●Nokia社はWindows Phone推進
写真4●Nokia社はWindows Phone推進
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 ビデオや音楽を高いクオリティで再現するという意味では、コンテンツを所有しつつ様々なハードウエアを展開するソニーにとって、Android 搭載スマートフォンの販売において10%程度という世界シェアをどう引き上げるかが世界で生き残る要件となってきていることは間違いない。一方のエリクソンの展示で筆者は、配信サーバーなどの提供ソリューションに多様さを感じた。インフラビジネスに特化したいエリクソンと、自社のコンテンツ配信AV事業へ携帯電話の融合を加速化したいソニーの思惑が一致して、ソニーモバイルが誕生したのではないだろうか。日本国内市場が縮小する中、「Unlimited」のネーミングで世界的に展開しようとするSony Entertainment Networkや、Playstation Networkへのアクセスしやすいデバイスが携帯電話になってきた国も少なくないはずだ。

 もともとスウェ-デンから世界的企業となったエリクソンに対し、同じく北欧のフィンランドで台頭してきた携帯電話ハードメーカーであるNokia社は、今回のショーでMicrosoft社の携帯電話用OSを担いだ「Windows Phone」を全面的にフューチャーした(写真4)。特に、ユーロ圏でAppleとの差別化を計ろうとの意図を感じた。