大手ITベンダーが、2013年度(2013年4月入社)の新卒採用活動を本格化している。日立製作所は3月16日、2013年度の大学・高専卒の採用人数を、12年度比で20%減らし600人にすると発表した。富士通は12年度並みの540人、NTTデータも12年度とほぼ同数の500人を13年度に採用する計画だ()。

表●主なITベンダーの新卒採用状況(大学・高専卒以上)
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 各社の採用計画を読み解くキーワードは二つある。「グローバル化」と「争奪戦の激化」だ。

 日立は大学・高専卒では事務系や技術系を問わず、原則として「グローバル要員」として採用する。このうち、10%程度を外国人とする計画だ。グローバル要員とは、海外赴任などを前提とした人材のことを指す。

 最近の学生は「内向き志向」が指摘されている。採用前から海外赴任を条件として示しておくことで、「チャレンジ精神に溢れた人材に多く応募してもらう」(広報)のが狙いだ。

 日立は本社だけでなく、グループ企業の採用も絞り込む。連結子会社を含む国内採用人数は12年度の6000人から、13年度は5000人へ減らす。一方で、海外での採用は前年度並みの約1万人を維持。事業のグローバル化が進んでいるため、海外で働く日立グループ社員を増やしていく考えだ。

 富士通は13年度採用から、文系の大学生を対象に職種別の採用を始める。学生に営業やシステムエンジニアなど、八つの職種から選ばせ、それに対応した採用プロセスを受けさせる。80人程度をこの方式で採用したいとする。

 学校推薦により採用する学生の一部に対しては、従来から入社前に配属先を約束していたが、一般応募する文系学生を対象にするのは初めてだ。富士通人事部の豊田建 人材採用センター長は「希望する職種に付けないことを懸念して、内定を辞退する学生を減らしたい」と狙いを話す。

 背景にあるのは「ぜひとも採用したい、優秀な人材の争奪戦が激化している」(豊田センター長)ことだ。

 IT人材の確保に躍起となるのは、ITベンダーだけに限らない。リクルートの岡崎仁美リクナビ編集長は次のように解説する。「ITを活用してビジネスを推進しようと考える企業の裾野は広がっている。IT知識を持ち変化に対応できる優秀な人材は、業界を問わず必要とされる」。

 グリーやDeNAなどのネット企業が新卒採用を活発化させているほか、IT人材を「別枠」で採用する企業も増えている。ITベンダーが他業界との人材争奪戦を勝ち抜くには、海外赴任の提案や職種の確約といった工夫が求められる。

 気がかりなのがNECだ。同社は国内外で大規模な人員削減計画を進めており、その影響で新卒採用計画の発表が遅れている。「12年度並みの350人程度を採用したい」(関係者)としているが、今後の業績などの推移で変わる可能性があるという。