マイクロソフトでは、さまざまな仮想化テクノロジーを提供している。その中でもクライアントに関連する仮想化テクノロジーとして、ユーザーデータ/ユーザー設定、アプリケーション設定を仮想化するプロファイルの仮想化技術、「Microsoft Desktop Optimization Pack(MDOP)」に含まれる「Microsoft Application Virtualization(App-V)」や「Microsoft Enterprise Desktop Virtualization(MED-V)」、Windows Server 2008 R2の標準機能である「リモートデスクトップサービス(RDS、旧ターミナルサービス)」や「Microsoft Virtual Desktop Infrastructure(Microsoft VDI)」と、多くの選択肢を提供できるのが強みである(表1)。さらに、各仮想化技術や物理マシンを総合的に管理する「Microsoft System Center」製品群がある。
強化された仮想化テクノロジー
Windows 7やWindows Server 2008 R2、MDOP 2011 R2におけるクライアント仮想化テクノロジーの主な強化ポイントは以下の通りである。
プロファイルの仮想化
Windows 7/Windows Server 2008 R2では、プロファイルの仮想化における下記のポイントが強化された。
(1)フォルダーリダイレクションの強化
・ログオン速度の向上
・オフラインファイル併用時の低速リンクの性能向上
・フォルダーリダイレクションが可能なフォルダーの増加
(2)オフラインファイルの強化
・ネットワークの接続状態に関係なくファイルへのシームレスなアクセス
・バックグラウンドでの自動同期
・除外フォルダーの選択
・透過的キャッシュ
(3)ローミングプロファイル(移動ユーザープロファイル)の強化
・レジストリ設定のバックグラウンドでの同期
・フォルダー構成の簡素化
・管理性の向上
Application Delivery Virtualization(App-V)4.6 SP1
App-V 4.6 SP1では仮想化パッケージを作成するシーケンサーの大幅な改良やMSIインストーラーからダイレクトに仮想化パッケージを作成するパッケージアクセラレータ機能が追加され、ソフトウエアを簡単に仮想パッケージ化できるようになった。また、仮想アプリケーションの読み取り専用キャッシュ(Read-only Shared Cache)がVDIシナリオだけでなく、RDS(ターミナルサービス)シナリオでもサポートされ、より効率の良い管理が可能となっている。さらにApp-V 4.6 SP1からMicrosoft .NET Framework 4のシーケンス処理もサポートされる。
Microsoft Enterprise Desktop Virtualization(MED-V)2.0
基本コンポーネントがWindows Virtual PCベースとなったことで性能が大幅に向上した。従来のWindows XPアプリケーションから、USBデバイス、ネットワークプリンター、マイドキュメントとデスクトップフォルダーがホストとゲスト間でシームレスにリダイレクトされるためユーザビリティが大きく向上している。また、「System Center Configuration Manager」によるWindows XP管理(仮想イメージの配信、パッチ管理、アプリケーションの展開)によって容易にMED-Vを統合管理することが可能である。
Microsoft Virtual Desktop Infrastructure(Microsoft VDI)
Microsoft VDIやリモートデスクトップサービス(RDS)/RemoteAppなどのセッション仮想化では、接続元となる端末の選択肢が増えた。従来はWindows Embeddedやシンクライアント専用端末(リモートデスクトップに接続するためのストレージやOSを持たない専用デバイス「ゼロクライアント端末」もある)が主な選択肢であったが、スマートフォンやスレートPCといった新しいデバイスにも広がりを見せている。
しかしながら、ユーザー企業の経営者側からすると接続端末を新規に購入するために新たに予算化することは難しく、現在使用している既存の端末を再活用してコストを低減できないかどうかの検討が増えている。そこでマイクロソフトは2011年6月から、VDIやRDSに接続するためのシンクライアントオペレーティングシステム(OS)として特化した「Windows Thin PC」の提供を開始した(表2)。