総務省は2012年3月23日、NTTグループの事業会社4社が電気通信役務の料金などの業務をNTTファイナンスへ移管することに関連して、各社が講ずべき措置について要請を行ったと発表した。これは、競合事業者による総務省への連名の要望書が提出され、公正競争上の懸念が示されたことを受けた措置である。

 日経ニューメディアでは、競合事業者による要望書の提出(2月15日)および意見申出書の提出(3月13日)を受け、NTTの考え方やスタンスを取材、総務省による要請が行われる前のタイミングである2012年3月19日号にその内容を紹介する記事「『法律違反ない』──料金業務統合で競合事業者の指摘にNTTが反論」を掲載していた。以下は、3月19日号に掲載した記事の転載である。

「法律違反ない」──料金業務統合で競合事業者の指摘にNTTが反論

 「NTTは特殊会社であると同時に株式会社でもある。利用者サービスの向上と経営効率化を目的とした今回の取り組みは株主価値を最大化するものであり、否定される趣旨のものではない。サービス開始に当たり必要な対策が指摘されれば対応するが、サービスそのものを中止しなければいけないような法律違反はないと考えている」(NTT 経営企画部門 経営管理担当の辻上広志担当部長)──NTTグループ4社の料金請求/回収業務統合に関し競合事業者74社が総務大臣宛ての意見申出書で法令違反の確認や実施延期を求めたことについて、NTT(持ち株会社)は本誌の取材に応じ、担当者が反論した。

 辻上部長は今回発表した料金請求/回収業務統合の狙いについて「現行制度の枠内で、ユーザーの利便性向上と経営の効率化を図るのが目的」と説明し、競合事業者が指摘するような法令や過去の競争政策に反した取り組みではないとする考えを強調した。

 料金請求/回収業務は、各社の本業である通信業務とは異なるノウハウを必要とする業務であり、これをグループ4社で統合して専門に扱う部隊を作ることで運用コストを最小化するという。他社においても料金請求/回収業務の外部委託は一般的に行われていることであり、今回の取り組みはこれと何ら変わらないという考えだ。請求元がNTTと関わりの薄い事業者に変わることに対するユーザーの不安緩和と、関連業務に関する雇用維持という観点からグループ企業で請け負う形を選んだと説明する。

今までできなかったことはできないなど、各論点にも個別に反論

 競合事業者らが指摘する論点についても個別に反論した。「競合事業者を不当に差別扱いするサービス」という指摘に対しては、今回のスキームは競合事業者も利用可能で、要望があれば提供条件などの調整を行うと述べた。競合事業者側の要望内容にも依存するので実際に提供可能かどうかはケースごとの判断となるものの、その際の提供条件などはNTTグループ内の事業会社と同等とする考えだという。

 「顧客情報を集約することでクロスセル営業が起きる」という指摘については、NTTファイナンスにはマーケティングや営業の機能がなく、料金回収業務だけを移すことからこうした指摘は当たらないと述べた。「NTT東西地域会社の料金請求でNTTドコモのサービスを案内することは今でもできない。今回のスキームで今までできなかったことができるようになるわけではない」とし、あくまで料金回収業務だけを行う中立的なサービスであることを強調した。

 また今回のスキームがNTT法で禁止されている「共同資材調達に該当する」という指摘は、通信役務の提供に関わるものではないことから、該当しないという考えだ。「共同資材調達の禁止は、ネットワークを事業会社ごとに個々に構築することでNTTグループとNCCの競争を促進させるのが趣旨。料金回収業務の一本化はこの趣旨に反さない形で経営効率化を目指すもの」という。

 グループ4社からNTTファイナンスへの出向が「NTT分割時に禁止されたグループ内人事交流に当たる」という指摘に対しては、「業務継続のための一時的な出向に過ぎず、(禁止理由である)人事交流が目的ではない」と反論した。また転籍のための労使交渉も進んでおり、出向から一定期間が経過した後は、本人の意見を反映しながらNTTファイナンスへの転籍を進めるという。

 「NTTグループ4社間の直接競争が損なわれる」という指摘に対しては、「これは1999年のNTT再編で、NCCとNTTの関係がまだ『蟻とガリバー』と呼ばれていた頃に、両者の競争を進展させるために議論された話。オープン化と合理化を求められた当社グループは、その後の非対称規制の導入などもありながら接続料を継続して下げている」と答え、当時とは状況が異なり競争は十分進展しているとする考えを示した。

総務省にもヒアリングなど対応し説明

 7月のサービス開始に向けて、先に挙げた人員のNTTファイナンスへの出向に関する労使交渉や新サービス用のシステム開発など、準備は進んでいる。料金請求/回収業務を統合予定の事業会社4社のユーザーに対する告知も2012年2月上旬から始まっており、今後複数回にわたり請求元が変更になることなどをユーザーに知らせる。総務省からのヒアリングにも対応し、趣旨は説明しているという。