ブランク氏は、スタートアップの定義について繰り返し述べています。それは「繰り返しが可能で拡張可能なビジネスモデルを探し求めている、仮の組織」。遂行を目的とする既存事業とは大きな違いがあると言います。大手企業内の事業としても、ビジネスモデルが確定しないのであれば、それは探求型の事業ということになり、組織もそれなりのものにする必要があります。(ITpro)

 アントレプレナー、投資家、教育者が直面する混乱の一つは、顧客開発、ビジネスモデル、事業計画と事業遂行の関係です。新しい事業は、いつ顧客開発とビジネスモデルに焦点を当てるのでしょうか。そして、事業計画と事業遂行が実際に行われるのは、いつなのでしょうか。今から、それを順序だてて説明したいと思います。

トマトを投げないで

 私は先週、ARPA-E(米エネルギー省高等研究計画局)の会議に出席するためワシントンD.C.に滞在していました。その会議の翌日には、NSF(全米科学財団)のイノベーション部隊(I-Corps.)と仕事をし、米国議会のスタッフに向け、アントレプレナー教育プログラムがいかに米国経済を変革できるかを説明しました。(余談ですが、スパイ博物館を訪問する時間もありました)

 そこで取り上げた話題の一つは、顧客開発、ビジネスモデル・デザイン、リーン・ローンチパッドといったアントレプレナー的な用語が、現在アントレプレナーシップのカリキュラムやビジネス・スクールで使われているツールやクラスをすべて置き換えるのか、でした。

 私は少々驚きました。と言うのは、私が今まで提唱していたことのほとんどが、既存のクラスを補うものだったからです。しかし、私は主として顧客開発とビジネスモデルの計画に関して書いていることに気づきました。私は今月(2012年3月)、アントレプレナーシップ教育者の集まりである、NCIIA(National Collegiate Inventors and Innovators Alliance)で基調講演をすることになっているので、出席者たちが私目がけてトマトを投げる前に、この課題に関して考えをまとめなければなりません。(訳者注:NCIIAはThe Lemelson Foundationが支援しているNPO団体です)

「探求」対「遂行」

 スタートアップにこれまで欠けていたことの一つは、スタートアップ企業とは何かという定義です。長年にわたり、私たちはスタートアップ企業は大企業の小型版と見なしていました。しかし今では、スタートアップ企業は「繰り返しが可能で拡張可能なビジネスモデルを探し求めている、仮の組織」ということを知るに至りました。このスタートアップ企業の定義の中には、新しいベンチャー企業と大会社の新しい事業部門の両方が含まれます。

 もしあなたのビジネスモデルの仮説がいまだにテストされていないために不確かだとしたら、あなたはスタートアップであり、繰り返しが可能なビジネスモデルを探し求めているのです。あなたのビジネスモデル、すなわち市場、顧客、流通チャネル、価格、確保/維持/成長戦略などが決まれば、あなたはそれを実行します。「探し求めること」と「事業の遂行」とは、新しいベンチャー・ビジネスと、既存の事業部門との違いです。

戦略

戦略
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 スタートアップの主な目的は、ビジネスモデルの仮説を検証すること、そしてピボットを繰り返して検証し終えることです。その後、「事業遂行」モードに移行するのです。この時点で、その事業は運営計画と財務予測に加え、一般に使われている他のマネジメント・ツールが必要になります。