先日、香港で世界最大級のフードエキスポが開催された。世界30カ国以上の参加があり、日本からも多くの食品系企業や食品加工機械系企業が参加した。私は支援しているクライアントに、顧客の反応を確かめそれを中国市場進出の足がかりとするため、そして、投資家に対してクライアントの製品を説明するために出展を薦めた。

 日本エリアの展示コーナーでは100を超す企業が参加していたが、その多くは宮崎、徳島、鳥取など日本の県や市の支援を受けており、企業単独での出展は少なかったようだ。幾つかの企業に出展の趣旨などについて聞いてみたが、多くは「今回、仕事で香港に来たのは始めて」「中国大陸には何のツテもない」という状況で、「まず、香港で成功して、それから中国大陸に進出する」つもりなのだという。「あれ?」と思い片っ端から聞いてみたが、実は半分以上の企業が香港や中国で仕事をしたことがまったくないらしい。

 あるラーメン店のオーナーは、「地元のみで4店舗展開している。実は、こちらに来るのが始めてだが、東京進出をして2000万円、3000万円掛けて失敗するよりも中国で失敗した方がずっと勉強になる」と私に説明していた。なんとも勇ましく経営者としての意気込みは感じるが、私からすると進出するなら絶対に失敗して欲しくない。「中国だから失敗した」「中国進出は難しい」言われてしまうからだ。

 私は自らが幾つかの企業や製品、サービスを海外に展開させてきた。その経験から言うと、彼らのような店が中国など海外に進出し成功するためには幾つかの条件があると思う。まず、そもそも中国を含む海外は「Away」であることをよく認識するべきだ。日本国内や地元であるHomeで勝つことができないのにAwayでいきなり商売をしても成功するとは思えない。少子高齢化、人口減少、経済鈍化する日本を憂く気持ちは分かるが、自らの商売が「どこでやっても成功する」構造になっていないのに海外に飛び出ても、成功は望みにくい。さらに、その企業がAwayである海外に出る場合は、「カネ」と「ツテ」が必要だ。カネは、海外に展開するための投資であり、ツテは、海外展開する場合のパートナーの存在だ。それらの関係について、今回は特に財務構造の視点から考えてみたい。

 まず、カネについて考えてみる。そこで必要なのは、その企業の製品やサービスの「GP(Gross Profit)= 売上総利益」、つまり「売上-売上原価」が高い水準にあることだ。例えばGPの割合は50%以上が目標となる。この構造を持っていれば海外で少々安く売らざるを得なくなっても利益を確保することができるし、原価部分を現地調達など下げることができれば、高水準の利益を維持できる。海外進出のために資金を使っても十分回収することができるだろう。

 GPがそもそも国内で販売している時から悪いと、海外進出に十分な資金、つまり販売管理費が使えないということになる。そして「NP(Net Profit)=最終利益」が稼ぎ出せなくなれば進出の資金は銀行からの借入れでまかなうことになり、負債が一気に増大する。そもそも海外進出はリスクを伴う投資であるから、できれば銀行から借入れるのではなく、自己資本で何とかしたい。