IDC Japanが発表した調査結果から、オープンソースソフトウエア(OSS)を使ったSIベンダーが売り上げを伸ばしている傾向が浮き彫りになった。企業システムにOSSの利用が根付いてきたと見られる。ただ、緊急サポートなどの不安も残っている。

 「OSSを使うSIベンダーは売り上げを伸ばしている。ただ、ユーザーはサポートに不安を持ち、ベンダーはOSSプロジェクトの継続性も懸念している」――。IDC Japanが2012年1月11日に発表した「OSSに関する利用実態調査」の結果から、こんな状況が浮き彫りになった。

 この調査は、国内ユーザー企業312社および、国内SIベンダーおよびサービスプロバイダーなど204社を対象にアンケートを実施したもの。毎年ユーザー企業を対象に調査を実施していたが、今回は新たにベンダーも対象に加えた。

 ベンダーに対し、売上高の増減と、OSSの利用実績が増えているかどうかをクロス分析した結果、OSSを利用しているベンダーほど売り上げが伸びている傾向が明らかになった。「OSSの使用実績が多い」と回答したベンダーの37.2%が過去3年間の売り上げを伸ばしていた。一方で「使用実績が少ない」と回答したベンダーでは15.2%にとどまる。

 「OSSを“武器”として使っているところがビジネスを伸ばしている。IT投資が増えないなかでコスト削減のニーズに応えている結果だろう」。IDC Japan ソフトウエア&セキュリティ シニアマーケットアナリストの入谷光浩氏はこう分析する。これまでOSSはSIベンダーの売り上げを下げてしまうとさえ懸念されてきたが、ここにきて潮目が変わってきた。「ここ2年はLinuxサーバーを利用するユーザーが4割程度でとどまっていたが、今回は5割に上がった」(同)という。

 ただ、OSSに課題があると感じるユーザーはまだ多い。ユーザーもベンダーもOSSのデメリットとしてトップに挙げたのが「緊急時のサポートが迅速に受けられない(提供できない)」点だ(図1)。ユーザーに緊急時のサポートへの意識が高まっている理由は、重要なシステムにOSSを利用するケースが増えていることが推定される。

図1●SIベンダーおよびサービスプロバイダー(204社)がIT関連ビジネスでOSSを使用することによるメリット/デメリット(複数回答可)
図1●SIベンダーおよびサービスプロバイダー(204社)がIT関連ビジネスでOSSを使用することによるメリット/デメリット(複数回答可)
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 ベンダーにも同じ問題意識があるのは、バグ対応などでOSSコミュニティーに頼る必要があり、自社で緊急対応できないことを物語っている。ベンダーが感じるデメリットの3番目「使用するOSSとそのコミュニティーがいつまで存続するか分からなくて不安である」(29.0%)からも、OSSコミュニティーに頼っている状況がうかがえる。

 問題意識が人材不足からコミュニティーに移っているのは、OSSへの理解が深まっているとも取れる。ベンダーがコミュニティーを支援するようになれば、問題も徐々に解消していくだろう。