「光ファイバー回線を使う電話の開通工事は、何週間もかかりそう」「加入電話と違って、停電時は使えなくなってしまうのでは」「ファクス(FAX)は問題なく使える?」---。NTT東西は2012年から加入電話やISDNのユーザーを、光ファイバー回線とIP網で提供する「フレッツ光」と「ひかり電話」のセットで、積極的に巻き取っていく。背景にあるのは、「2025年までに加入電話網をすべてIP網に移行する」という長期ビジョン。だがユーザーにデメリットはないのか。今回は、日経コミュニケーションのモニター読者から寄せられた代表的な5つの疑問に回答する。
【Q】「ひかり電話」は加入電話並みの早さで開通できる?
【A】今後、同等の条件で開通できるケースが増えてくる
光ファイバー回線を使ったインターネット接続サービス「フレッツ光」の利用者向けに、NTT東西が提供しているIP電話サービス「ひかり電話」。現状では、申し込みから開通までにかかる期間については、既存のメタル回線を使う加入電話サービスに軍配が上がる。
一般にNTT東西の販売代理店などでは、申し込み手続きから開通まで、加入電話は約1週間から10日前後、フレッツ光は3週間~2カ月(戸建ての場合)と、説明している。もちろん、およその目安であって、地域や場所など個別の条件で違いはある。
光ファイバー回線とメタル回線のどちらも提供可能なエリアの場合、開通期間の違いは、建物内に既に導入済みの回線があるかないかに大きく依存する。引っ越し先で電話に加入する場合、メタル回線は建物内に残置されており、回線引き込み工事は必要ないことが多い。NTT局内にある交換機側の工事だけで開通できる。一方、フレッツ光の場合、新規に回線引き込み工事が発生するケースが多い。
ただし今後は状況が変わる。「引っ越し後も光ファイバー回線をできるだけ残置するようにしており、再利用できる機会は増えている」(NTT東日本)。そうした条件に当てはまれば、開通期間はメタル回線とほぼ同等になりそうだ。実際、光ファイバー回線が各戸まで導入済みのマンションなどでは「開通期間にほとんど違いがないケースもある」(NTT東日本)という。
配線工事を容易にする工法を開発
光ファイバー回線の場合、建物の壁に光ファイバーを通すための穴を開けるための工事や、その工事の許可を得るための権利者との折衝に時間がかかることがある。この問題については、配線の工法を改善して光ファイバー回線を導入しやすくしている。

例えば「隙間配線インドア光ファイバー」はその一例(写真1上)。建物の壁に穴をあけることなく屋内に光ファイバー回線を引き込めるようにするために開発された。2012年から商用サービスでの利用を開始する。
隙間配線インドア光ファイバーは、光ファイバー芯線を折れや曲げに強い部材で囲って強度とフレキシビリティーを確保している。このため、ドアのサッシやヒンジ部分など少しの隙間があれば大がかりな工事なしで光ファイバー回線を導入できる。
配管内の施工についても、1本に多数の芯線を格納し、従来の4分の1の空間で配線できるようにした新型回線の活用や、配管工法上のツール開発を進めている。写真1下は、配管の途中にある継ぎ手のような空間での新工法の例である。内視鏡技術を活用したリモート操作が可能なマグネット付き回線を使う工法だ。配管内の壁が連続していない空間があると、光ファイバー回線を導入口から押し入れるだけでは通らない。継ぎ手部分を手作業で配線するため、これまでは壁や床を外したりする必要があった。
これに対して新工法では、マグネット付き回線を導入口の反対側から差し込み、カメラを使って光ファイバー回線を誘導する方法に切り替えた。短い工期で施工を終えられるようになった。