NTT東西は「2025年までに加入電話網をすべてIP網に移行する」と表明しているが、その大きな障害となりかねないのがISDNの存在である。これに対してNTT東日本は2011年6月、NTT西日本は2012年1月に、両社の長期ビジョンを達成するための戦略商品としてインターネット接続サービス「フレッツ 光ライト」の提供を始めた。加入電話や事務用ISDNを使う多くの企業ユーザーは、フレッツ 光ライトに切り替えることで通信費を削減できる。さらにNTT東西は2012年、単にフレッツ 光ライトに移行するだけではメリットを得られないユーザー向けに、二の矢、三の矢も放っていく。

写真1●NTT東日本の局舎内
写真1●NTT東日本の局舎内
(写真:中島正之)

 既存の加入電話網をIP網に完全移行するのに伴い、NTT東西が「2025年時点で終了する」ことを明らかにしているサービス品目のうち、最も契約回線数が多いのはISDNサービスである。2011年9月末時点で413万7000契約。減少が続いているものの、簡単にサービスを終了できる契約数ではない。

 ISDNサービス自体は、2025年まで使えることになっており、新規加入を停止する時期もまだ予定されていない。その意味では、法人・個人ともにユーザーが急いで切り替える必要はない。

 ただし、「ひかり電話」が利用できるうえ、事務用ISDNより月額基本料が安いインターネット接続サービス「フレッツ 光ライト」の提供を全国各地で始めるなど、通信料金の面では既存のISDN回線や加入電話(アナログ電話)回線から乗り換えたほうがコストダウンになる条件を、NTT東西は整えつつある。

 実際にユーザーがサービスを乗り換える場合、今のISDNの使い方や発生するトラフィック量によって、選ぶべきサービスは違う。音声(通話)用途だけならフレッツ 光ライトとひかり電話の組み合わせがお得だ。データ通信用途がメーンで、通信トラフィックが小容量かつ間欠的ならフレッツ 光ライトと「データコネクト」の組み合わせが、絶えず通信するなど通信トラフィックがある程度以上多い場合ならフレッツ 光ネクストだけを利用すればよいだろう。以下、詳しく見ていく。

通話目的の事務用回線は「光」にすれば必ず割安に

 まずは、加入電話回線やISDN回線を、音声通話のために使っているケースから(図1)。「業務でインターネットは使わない。通信回線は電話用とファックス用に2回線だけ必要」という環境の小規模オフィスでは、今まではフレッツ光へ切り替えても安くできなかった。定額制の「フレッツ 光ネクスト」の月額基本料が5460円と、電話回線の基本料より高かったからだ。「ひかり電話の『オフィスタイプ』や『オフィスエース』など、通信回線が3回線以上必要な企業規模でないとメリットを訴えにくかった」(NTT東日本の高橋幸一ビジネス&オフィス事業推進本部オフィス営業部営業推進部門長)。

図1●フレッツ 光ライトを活用することで小規模ユーザーにもIP電話移行のメリットが出てきた
図1●フレッツ 光ライトを活用することで小規模ユーザーにもIP電話移行のメリットが出てきた
インターネットを使わなければ基本料金だけで済むフレッツ 光ライトは、電話とファックスしか使わないユーザーにとってもコスト削減策になる。
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 そこに最低基本料金が月額2940円という低廉なフレッツ 光ライトが登場したことで状況が変わった。ひかり電話を2回線2番号で使う場合の月額料金は3780円。加入電話回線を2回線引いている場合より月額1470円安くなり、ISDNの事務用回線(4011.5円/月)と比べても通信費の削減になる。単純にひかり電話に置き換えるだけで料金が安くなるため、比較的容易に移行できるだろう。