検討会議に参加してもらうキーパーソンの人選は、各利用部門の部門長に任せるケースが多いだろう。一般に部下への仕事のアサインは部門長が決めるものなので、当然のことである。ただし、検討会議に参加するキーパーソンの人選を、部門長に完全に任せてしまうのは考えものである。「キーパーソンとはいえない、時間に余裕のある担当者が選ばれることが少なくない」(住友電気工業 情報システム部 情報技術部 システム技術グループ グループ長 堀正尚氏)からだ。

 時間に余裕のある担当者が参加するようでは、検討会議は立ち行かなくなる。業務に詳しくなかったり問題意識が希薄だったりすると、「その件は、次回までに聞いてきます」「持ち帰って検討します」という具合に、なかなか議論が先に進まなくなる。さらに、検討会議の参加者の間で合意が固まったとしても、利用部門でその内容が尊重されないこともある。

 そのためITエンジニアは、検討会議に参加するキーパーソンの人選にできるだけ積極的にかかわりたい。

利用部門で人望がある人を選ぶ

 では、どんな人物が検討会議に参加するキーパーソンとして望ましいのだろうか。取材したITエンジニアが挙げたキーパーソンの条件を図1に示した。

図1●利用部門のキーパーソンの条件
図1●利用部門のキーパーソンの条件
検討会議に各利用部門の代表者として参加してもらうべきキーパーソンの条件を挙げた
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 左側の四つの条件は、望ましい人物像を表したものである。まず「現行業務を熟知している」は絶対に不可欠な条件だ。さらに、「会社全体の視点に立てる」「業務やシステムに対して問題意識が高い」という条件も大半のITエンジニアが挙げた。

 さらに、合意形成を考えたとき「利用部門の中で人望がある」という条件も重要だという。「利用部門の部門長や担当者に、あの人が決めたことなら信頼できる、と思ってもらえれば、検討会議後に要件が変わるリスクが小さい」(プリベクトの北山一真氏)からだ。

 そういう人物を見つける手掛かりになる条件は三つある。

 一つ目は「課長補佐・係長・主任クラス」。現行業務を熟知している社員は一般にこのレベルの役職になる。また、こういう役職の人物を選ぶのは、「検討会議に参加するキーパーソンの役職をそろえるという目的もある」(住友電気工業の堀氏)。

 「優秀な中堅社員としてすぐ名前が挙がる」。これが二つ目の条件である。「『優秀な中堅社員といえば誰ですか?』と尋ねて利用部門の部門長がすぐに名前を挙げたときは、誰もが認めるキーパーソンであることが多い」(NEC システム技術統括本部 主席PMO 大場彰夫氏)という。

 三つ目は「他部門との会議によく出席する」という条件だ。この条件に合致する人物は、「他部門との交渉に慣れている上に、会社全体の視点に立つことができる」(プリベクトの北山氏)。

本当のキーパーソンを補佐にする

 こうした条件に合致するキーパーソンを要求したとしても、検討会議にふさわしくない担当者が参加してくることがある。そんなときは、利用部門の部門長に改めてキーパーソンの人選を依頼したり、キーパーソンを見つけて指名したりすることになる。しかしあからさまに交替すると、それまで検討会議に参加してきた担当者のプライドを大きく傷つけることになる。

 そこで野村総合研究所の荒生知之氏は、後から参加するキーパーソンを形式的に「補佐役」と位置づける。こうしてプライドを傷つけないように配慮することで、「本当のキーパーソンに参加してもらいやすくなる」(荒生氏)という。