シンガポールから、約10カ国・地域の拠点を管轄するリコー・アジア・パシフィック。ここから同地域のIT戦略も統括する。リコー・アジア・パシフィックでIT部門の責任者を務める内田征輝マネジャーに、シンガポールでの業務やグローバルIT人材の育成方針などを聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ


リコー・アジア・パシフィックの内田征輝マネジャー
リコー・アジア・パシフィックの内田征輝マネジャー

仕事をするうえで、アジアならではの難しさとは?

 「アジア」の多様性だ。欧州、北米、アジアなどとくくられることが多いが、アジアを構成する国は一様でなく、他のエリアに比べて極めて複雑だ。

 地理的に見ても領域が広く、海で隔てられた国もある。ユーロのような共通通貨はなく各国が通貨を持ち、それぞれの国で規制がある。経済発展の度合いも大きく異なり国民所得も国ごとに格差が大きい。したがって、アジアでの一元的なビジネスはしにくい。IT担当からすると、特定の国の通信環境の不安定さも悩みの種だ。

リコーのアジア拠点での課題は?

 アジア・パシフィックのそれぞれの販売拠点が持つ顧客情報を集約する頻度を上げようとしている。グローバル展開している顧客の複合機を一元管理するサービスのサポート力を向上させるためだ。

 これまでこうした情報の把握は、四半期ごとや毎月といった頻度でも大丈夫だった。しかし、市場環境や顧客の要望の変化のスピードが速くなっており、毎日のように新たな販売状況や顧客データの把握が必要になっている。

 システム面の変更だけでなく、販社での業務フローの変更もしていく必要がある。

グローバルIT人材に必要な能力とは?

 マネジメントの能力を含む「ビジネス力」や、多様な人間とコミュニケーションができ協調して仕事ができる、人間としての幅を持つ「人間力」のあるIT要員だ。こうした能力を元から持っていなくてもよいが、少なくともその必要性を感じて、キャッチアップしようとする意識が重要だ。ITの知識だけでは海外拠点で通用しない。

 英語だけでなく現地語も学び、現地スタッフと心を開いて話そうとする意欲が必須。そのためには、異なる文化や習慣を理解し「現地にまみれる」くらいの覚悟がほしい。その上で、伝えたいことをきちんと伝えながらスタッフをまとめてビジネスをしていくマネジメント力が欠かせない。